【新世界エヴァンゲリオン】

 

<通学路>

ヒカリは十分前から何度も繰り返している作業を続けた。すなわち、時計を見ることである。

彼女の親友が遅刻することはよくある。だがそれは日常ネルフないし同居人絡みの事が多いので心配はしない。だが今朝は違った。先日の戦闘に伴う避難勧告が解除されて最初の朝なのだ。

昨晩、自宅に帰ってきてから何度も連絡を取ろうとしたヒカリだったが相手は常に留守番電話だった。同じ様に他2名のパイロット宅にも連絡したのだがカヲルも同じ状況でトウジに至っては不通だった。ネルフに直接確認すればいいのだがそんな重要機密を一般人に教えてくれるはずもない。

…こんなことならミサトさんの携帯の番号を聞いておくんだったわ

 ため息をつくヒカリ。そこへそのうっとうしい気分を吹き飛ばす元気な声が届く。

「おっはよヒッカリーっ!!」

ヒカリの顔がふっと笑顔に変わり負けじと大きな声を出した。

「おはようアスカ!!」

 

いつものようにシンジは少し後を着いてくる。

そのシンジにも怪我はない様だ。

…アスカも碇君も無事だったんだ。

いつもと変わらぬアスカとのお喋りに興じるヒカリ。

「やあおはよう」

「おはよー」

カヲルとマナが姿を見せる。

「あれ、今日は一緒なの?」

「そうなのよ。朝、部屋の外に出たらこいつがマンションの方に向かって歩いてくるのが見えたから」

「いや、困ったことにまた方向感覚がおかしくなってね」

一瞬、シンジとアスカの顔がかげったがヒカリとマナは気付かなかった。

「おっす。朝っぱらからどないしたんや?」

「鈴原!!」

「な、なんやなんや委員長?」

「何で昨日電話したのにいなかったのよ!?」

「電話?」

「そうよ!それにアスカも碇君も渚君も!!」

 

 

【第弐拾参話 求めたものは】

 

「…なるほどね」

ヒカリはこめかみを押さえていた。

いわく、

 シンジとアスカはへとへとだったため碇家の厄介になっていた。今朝は碇家から通学している。無論ミサトはまだ忙しく家に帰っているはずもない。

 トウジはへとへとだったため家に帰って妹の姿を見た瞬間ぶっ倒れた。そのときに電話機を直撃。新しい電話機が来るまでは不通である。

 ちなみにカヲルはすやすやと寝ていて単に電話に気がつかなかった。

「ま、そんなもんよ出撃の後は」

「そうだったかな?」

アスカの言葉に首をかしげるシンジ。

「はははは、そういえば相田君の姿が見えないけど?」

「ああ、いつもの場所におらんかったんや。わしも行くのが遅かったし、たぶんわしがまだネルフにおるとでも思たんやろ」

「それはそれとしてとりあえず学校へ行こうよ。このままじゃ遅刻だよ」

シンジの言葉にはたと我に返る一同。

「行くわよシンジ!生徒会長と副会長がそろって遅刻なんて恥だわ!!」

全力疾走に移るアスカと慌てて追いかける一同。先頭を走るアスカのすぐ後ろにいながら息一つ乱さないシンジは懸命に追いかけてくるみんなを心配そうに振り返る。

「間に合ったわ!」

直角ターンで校門に飛び込むアスカ。

『おっはようございまーす!!!』

あまりの大音量に思わずシンジに抱きつくアスカ。

「アスカ!?…え?」

シンジも声を失う。

「なんやなんや?」

一番手で追いついたトウジが目を見張る。

 

「みなさん遅かったですね」

ずらり。そんな効果音がバックに流れてきそうな全校生徒を後ろに従えてマユミが言った。

「な、な、なんなのよマユミ!?」

そこへようやく一同がそろった。

「おや、わざわざお出迎えかな?」

『渚せんぱーい!!』

女子から歓声が上がる。

「やぁおはようみんな」

軽く手を振るカヲル。

『きゃーっ!!』

それを皮切りに次々に歓声が上がる。

『いっかっりっせんぱーい!!』

『副会長素敵ー!!』

「…おはよう」

そう言って微笑むシンジを見て少しむっとするアスカ。

『鈴原先輩かっこいいーーっ!!』

「なんや、照れるな」

慣れないことに頭をかいて照れるトウジ。

『そーれ、ア・ス・カ!ア・ス・カ!ア・ス・カ!』

『会長―っ!!』

『アスカ様―っ!!』

「まったくしょーがない奴らね」

こめかみをおさえるアスカ。

「で、なんなのマユミ?」

「そうよ」

「みんな昨日のネルフの発表を見たんです。それで、みなさんにお礼を言いたいって言うから生徒会としてもちゃんと統制をとってお礼を言わせてあげようと思って。

 でもなんでみんなにお礼を言うのかは内緒ですよ。みなさんわかってますね!

『はぁーい!!』

唱和する生徒達。

「山岸さんて保母さんに向いてるかも」

「同感ね」

そんなことを囁き合う二人にマユミがマイクを渡す。

「というわけで生徒会長か副会長にごあいさつを…」

「ちょっとねぇ…」

「一応おおっぴらにやるのはまずいんだけど」

「あら大丈夫ですよ。ミサト先生には連絡しておきましたから」

「それでなんて言ってた?」

「はっきり言ったりしなきゃ大丈夫だそうです」

こともなげにいうマユミにこめかみを押さえるアスカとシンジ。

そのとき遠くから爆音が聞こえてきた。

「「ミサト(さん)だ!!」」

すぐに行動に移る二人。

「ミサトが来るわ!!はやく校門の前をあけなさい!!」

「校庭に通じるルートを開けて後の人は避難するんだ!!」

ギャギャギャギャギャ!!

白煙を上げながらターンしてきた青いルノーは歓声をあげる生徒達の間を通り抜けシンジとアスカの前で急停止した。

「ごっめーん!間に合った?」

ドアを開けるなりマユミに尋ねるミサト。

「ええちょうどいいタイミングです」

「そうよかった。おっはよーみんな!

『おっはようございまーす!!』

「うんうん、みんな元気で何よりね。あらシンジくんアスカどうかした?」

「あのですね…」

「どうかしたじゃないわよ…」

頭痛を覚える被保護者2名。

「まぁまぁ。みんなが世界を救ったパイロットに感謝したいってんだからいいじゃない」

「極秘でしょ、一応」

「こんなに大々的にやったらどんな間抜けなマスコミでも気付きますよ」

ジト目で答える教え子二人。

「だいじょーぶよ。そのために報道管制やってんだから」

あくまでお気楽なミサト。

「そんなことよりもみんなになんかかっこいい一言でも言ってやんなさい」

「………はぁ」

「しょーがないわね、シンジ何か言ってやんなさいよ」

アスカはシンジに振った。

「戦ったのは僕じゃなくてアスカ達だろ?」

軽く返された。

「…じゃ、渚か鈴原」

次に晴れて本当の戦友に昇格した二人。

「どう考えても最大の功労者は惣流さんだよね」

「せやせや」

事実だしアスカの辞書に謙虚という文字がないのは周知の事実だ。

「………」

「ほら、今なら怒んないわよ」

バンバンと車を叩くミサト。車の上に乗って演説しろということらしい。

「そ、そんなの…」

「じれったいわね。…構わないわシンちゃんやっちゃいなさい」

強硬手段に訴えるミサト。

「しょうがないですね」

苦笑しながらシンジはアスカの背中に手を回す。

「ちょ、シンジ!きゃっ!!」

トン

シンジはアスカを抱き上げるとまるで重さを感じさせずに車の屋根に飛び乗った。

『おおーっ!!』

そのままアスカをおろすと車から飛び降りる。

「ちょ、ちょっとシンジ!」

「がんばってねアスカ」

そういってシンジは微笑んだ。

「う…」

毎度のことながら逆らえない正直者のアスカ。

…こ、今回は明らかに意図的ね。わかっていても逆らえないのが悔しい所だわ。

アスカは敗北を認めた。

「…しょうがないわね。マユミ、マイク貸しなさい」

『おおーっ!』

ワンパターンの歓声を上げる生徒一同。

…本当にしょうがないやつらね。

自然に笑みがこぼれるアスカ。

 

「…今更言うまでもないことだけど、アタシ達は無敵よ!!

 たとえ相手が同じ兵器を持ち出しても所詮敵じゃないのは見ての通り!!

 当然、みんなわかってるわね!!」

『はーい!!』

「アタシ達がいる限りこの町もこの国も世界も全部守ってみせる!!

 しっかり感謝しなさいよあんた達!

 あんた達には指一本ふれさせないわ!!」

片腕を空に向かって掲げアスカは断言した。

『うおおおおおぉぉぉぉーっ!!』

それに答えて腕を掲げ叫ぶ生徒一同。すぐに拍手や歓声が続いた。

…ほとんど選挙か暴動の演説ね。それとも革命でも起こすのかしら?

ミサトは物騒なことを考えながらも、生徒達がアスカの発言に込められた思いを正確に受け止めていることを喜んでいた。彼らも素直じゃない生徒会長に慣れてきたということだ。

 

この後、生徒会長他の一行はもみくちゃにされ一時限目はミサトの要請により全校休講となった。

 

騒ぎから一人抜け出したマユミはきょろきょろと辺りを見回した。

やがて校舎の陰に目的の人物を見つけだす。

少年は壁にもたれて座り込みぼーっと空を眺めていた。

「相田君?」

「…お疲れさん」

言っている本人の方がよっぽど疲れたような声を出している。

「相田君の方こそお疲れ様。でも本当にいいんですか?全部私が考えたって事にして」

「………」

考えてみればわかることだがそもそもマユミに今回の様なことを思いつけるはずがない。一件を全て段取りしたのはケンスケであった。マユミに生徒達を統制させる一方で学校やネルフに掛け合って許可を取り付けた。無論これは尋常なことではない。日頃各種コネを結ぶのに勤しんでいるケンスケならではだが。

「…いいんだよ、これで」

マユミはケンスケの隣にしゃがみ込んだ。

「………今日はカメラ出さないんですね?」

「………」

「………」

「………あいつらさ」

「はい?」

「…あいつらを写真に撮ることなら誰にでも出来るんだ。でもさ、それってあいつらの外面だけしか撮ってないんだよ。特に惣流や渚なんかなまじ外面があれだからみんなそれだけ見て満足して考えることをやめちまう。

 …でもさ俺は、少なくとも俺達くらいはあいつらの中身を撮って記憶にとどめたいと思う…そういうこと思うようになったんだ、最近」

「………」

「今回の事もそうさ。俺が仕組んでやったってわかってたらさ、いつもと同じだろう?

 …なんて言うのかな?その、あいつらがエヴァのパイロットであるってことに代わりはないけど、それが知られていても、学校でくらい気楽になったっていいじゃないか」

「………」

「………」

「………なんか格好いいです、相田君」

「はは、よしてくれよ」

照れて顔を背けるケンスケ。

それを見てマユミは微笑んだ。

 

 

 

 

<七番ケイジ>

「………」

ゲンドウは一人エヴァ初号機の前に立っていた。

眼鏡をとりじっと見つめる。

その瞳に光が宿ることはない。だが、彼女は確かにそこにいるのだ。

「…戦いは終わったよ。これからはそれを守るための戦いだ。もう私のすべきことはシンジのためにその地ならしをすることぐらいしか…」

独白するゲンドウ。自嘲気味に笑みを浮かべる。

「せめて、君の眠りぐらいは守ってみせよう…」

 

「…碇」

振り返ると冬月が立っていた。

「…冬月先生…いつからそこに?」

声を掛けられるまで気付かなかったゲンドウ。

冬月は穏やかな笑みを浮かべている。

「なに、今来たところだ。リツコ君に聞いてな」

「………」

何とも言えない表情を浮かべるゲンドウ。

「ふふふ、いつまでたっても嫁には頭があがらんか」

「…冬月先生」

「怒るな。で、気は済んだか?」

「…ええ」

眼鏡をかけ直すゲンドウ。

「残りの人生は、今この時を守るために費やすとしよう。そうでなければ安心してシンジ達などに任せられん」

…ほとほと素直にはなれん男だな

だが、冬月は笑みを崩さずに答えた。

「ああそうだな」

 

 

 

 

 

 

NEON WORLD EVANGELION

Episode23: oneday afternoon 

 

 

 

<執務室>

パチン

駒を置く音が広い部屋に響く。続いて扉が開く音がした。

 

「…おやシンジ君か。碇ならいないぞ」

冬月は将棋台から顔を上げると客に向けて言った。

「そうですか、失礼しました………詰め将棋ですか?」

冬月の手元を見てシンジが言った。

「ああ、数少ない趣味でね。よかったら一局どうだね?」

「将棋はやったことがないんですが…」

そういいながらも冬月の所に行くシンジ。

「かまわんよ、碇はちっとも相手をしてくれんのでな。他に私相手に将棋を指してくれるのは加持君くらいしかおらん」

「そうでしょうね」

さすがに冬月相手に将棋を打とうと思う人間はなかなかいないだろう。

シンジも帰国当初はまだ冬月になじまなかったが、近い立場で仕事をするうちに冬月の人柄を知りミサトや加持とまではいかなくとも気を許すようになった。また冬月も孫か子供のようにシンジに接するようになった。…そのためか一時期ゲンドウが冬月に大量の仕事を押しつけたことがあったが、シンジに差し入れの弁当をもらった冬月はどこ吹く風とばかりに仕事をこなしてしまった。余談である。

シンジは冬月から簡単にルールを教わる。冬月の予想通りシンジは一通りの説明であらかたのことを覚え込んだ。

「時間はよろしいんですか?」

パチン

「少しは忙しさが緩和されたからな。シンジ君こそいいのかね?アスカ君あたりが待っているんじゃないか?」

パチン

「今日は作戦部の訓練を見学するって言ってましたから」

パチン

「すると待たされているのはシンジ君の方か。その若さで所帯を持つと大変だな」

冬月は当然シンジとアスカの結婚を知っている。

パチン

「今までとあまり変わりはありませんけどね」

パチン

「そうかね?まぁ葛城君と加持君の方が先に片づかないとな」

パチン

「そういえばミサトさんの父親の代役をなされるんですよね」

パチン

「この歳で恥をかきたくはないのだが、どうしてもと頼み込まれてね」

パチン

「でも副司令にしかつとまりませんよ」

パチン

「確かに、後は碇くらいか…」

思わず想像してしまう二人。

「ぷ」

「くくく」

パチン

「まぁ立場的には碇は新郎新婦の親友の夫だからな。父親というわけにはいくまい」

「もし頼まれても花嫁より照れて歩けないかもしれませんね」

パチン

「そうだな。しかし葛城君達の結婚式も楽しみだが、君たちの結婚式の方が楽しみだ。碇がどんな顔をするのか…」

パチン

「…あ、それ待ってもらえませんか?」

「甘いぞシンジ君。初心者といえども手加減はなしだ」

「そんなぁ」

盤面を見ながら考え込むシンジ。

「さすがの碇も欠席はできまいからな。もっとも逃げたところでネルフの総力をあげて捜し出し式場へ連行するまでだが」

「リツコさんなら手錠でもつけていくんじゃないですか?」

パチン

「…ほう、そう来たか。さすがに飲み込みが早いな」

「そんなことないですよ」

「私も人間相手に打たなくなって久しいからな」

パチン

「今度、MAGIでプログラミングしましょうか?」

パチン

「やはり人間相手が一番だよ」

パチン

「…そういえば僕たちの方の会場ですが」

パチン

「ああ問題ない。どのみち君達の方が厳重な警備が必要だからな。むしろ都合がいいよ。招待客もそんなに大勢でなければ問題ない」

パチン

「そうですか、ありがとうございます」

パチン

「なに礼をいわれるようなことではない。ところで、シンジ君…」

「なんでしょう?」

「ものは相談だが…その金は戻せないかね?」

「いくら副司令の頼みでもそればっかりは駄目ですね」

にっこり笑うシンジ。

「むむむむむむ………」

 

 

<リツコの研究室>

「リツコ来てる?」

「あらミサト。ちょうどよかったわコーヒー飲むでしょ?」

リツコはミサトの姿を認めるとカップを用意する。

「う、うん。それはいいんだけど」

「どうかしたの?」

レイの様子を確認した後、椅子に座り直すリツコ。お昼寝の真っ最中である。

「碇司令が発令所に来てるんだけど…」

「発令所?ああ今日は定期訓練だったわね。たまには視察しようって事でしょ」

「それはいいんだけど、なんか怖いのよ。一言も発しないんだけどこう空気がぴりぴりしてるって言うかさ。みんな生きた心地がしなくて」

…体よく逃げてきたのねミサト。

「…単に機嫌が悪いのよ」

あっさり夫の精神状態を告げる。

「なんか心当たりあるの?」

「シンジくんが執務室にいるのよ」

「…なら機嫌がいいんじゃない?」

…あの親ばかでしょ?

どこに盗聴器があるかわからないので後の言葉は飲み込んだがリツコには伝わったようだ。

「なんでも副司令と楽しく将棋をしてるんですって」

「へ?」

「最初は碇司令を訪ねてきたらしいんだけどちょうど席を空けてたらしくて。大した用じゃなかったのもあって副司令にさそわれて将棋を始めたのよ。ま、それがおもしろくないのね」

「………」

…あのオヤジは何歳よ!たくっ。

「今はシンジくんがいるからいいけどシンジくんが帰ったらきっと副司令残業ね」

「………ネルフって一体何なの?」

珍しく悩むミサト。

「…じきに碇家の家族企業になるわよ」

リツコの何気ない一言にミサトはきっかり十秒間沈黙した。

「は?」

「いい、ミサト?

  総司令 碇シンジ

  前総司令 碇ゲンドウ(総司令の父親)

  前副司令 冬月コウゾウ(総司令の祖父代わり)

  作戦部長 加持ミサト(旧姓葛城、総司令の姉代わり)

  次期作戦部長候補 碇アスカラングレー(旧姓惣流。総司令の配偶者)

  技術部長 碇リツコ(旧姓赤木、総司令の母親)

  特殊監査部長 加持リョウジ(総司令の兄代わり)

 どう、わかった?」

「…そういやそうね。みんなシンジくんの身内じゃない」

「おまけにシンジくんにお願いされると逆らえない人ばっかりでしょう?」

「さぞかし国連やら何やらが気にしそうね。ま、あたしは全然構わないけどね」

「ま、私ももうすぐしたら帰るから、そのときにあの人を引っ張ってってあげるわ」

「よろしくお願いするわん」

 

 

<発令所>

発令所の面々は居心地の悪さに耐えかねていた。ミサトが逃げ出す原因となった人物はまだ司令塔に座っている。だがミサトの逃亡時とはかなり状況が異なっていた。そのように状況を変える方の原因となった人物は今ゲンドウの傍らであれこれ質問をしている。

 

アスカは真剣だった。

ネルフの作戦部長を目指すと言うことは生半可なことではない。アスカだから何とかスタートラインに立つことができるのであって少々有能なくらいの軍人には決してつとまらない。その下で働く日向や青葉ですら世界屈指のエリートなのだ。ましてミサトに至っては…。

アスカは作戦部に入ることを決めてからまず最初にミサトに対する評価を変えることから始めた。もともと自分の命を預けてきた相手である。そのポストにいるという事実と実際に指揮されてみての感想からアスカにしては極上の評価をしていたつもりだった。もっとも日常のミサトの姿はその評価をあっさり崩しかねないのだが…

だが、実際はそんな生半可なことではきかない。ミサトは世界でも上から数えた方が早いくらいの優秀な軍人なのだ。だからこそここにいる。日々をまんねりとして過ごしていてはその境地に追いつくことは決してできない。

アスカは地道な努力を開始した。日常的な訓練であっても見学するようにしたのはその一環である。パイロットとして見ていた時には軽く見ていたものだが見るのとやるのとでは大違いである。戦いは終わった。だからこそ、アスカは訓練しなければならないのだ。

 

事情があって訓練開始から随分たってアスカは発令所に姿を現した。訓練中に手のあいているものなどいない。だから質問などはミサトが応対してくれるはずだったのだが。

…いない。

このとき既にミサトは雲隠れした後だった。

作戦部員の邪魔をするわけにもいかない。途方に暮れたアスカの視界に司令塔で座ってじっと訓練を眺めている人物が入る。自分が来たのに気付いてはいるはずだがまったく反応は示さない。

…ど、どうするアスカ?

さすがのアスカも躊躇する。だが、自分を作戦部に推したのは他ならぬその人物だ。期待には応えなくてはならない。自分がシンジのそばにいるためにも。

…いくわよアスカ

 

日向はこっそり青葉に耳打ちした。

「…シンジ君の誕生日の時も目を疑ったが、こうして見てても信じられないな」

「…全くだ。さっきとは別の意味で背中がぞくそくするよ」

司令塔の上ではアスカが次々と行う質問にゲンドウが答えている。

ゲンドウに質問するアスカの姿にも驚くが、アスカに答えを返しつつ、時に笑みを浮かべるゲンドウの姿に異様なものを感じる一同であった。

 

この件に関するE計画担当者からのコメント

「ま、あの人も息子の嫁、娘には甘いということね」

特殊監査部長のコメント

「いいんじゃないか?」

作戦部一同

「ノーコメント」

副司令のコメント

「くくく…碇め照れおって」

次期総司令のコメント

「そうですね、うれしいです」

 

 

<帰り道ミサトの車中>

アスカは後ろから助手席のシンジに両腕を回す。

「ねーシンジ。今度、リツコん家に行くときだけどさ」

「うん」

シンジは後ろを振り返る。

「アタシが晩御飯つくってもいいかな?」

上目遣いでシンジの顔を見るとアスカの一番好きな笑顔が返ってきた。

「うん。父さんもリツコさんもレイも喜ぶと思うよ」

「うん!」

二人の会話を聞きながら極上の笑みを浮かべるミサト。

「…ほんと、平和よね」

 

 

 

帰ってきたチルドレンのお部屋 −とんでその23−

レイ 「…というわけで」

カヲル「この部屋も無事復活しました」

トウジ「ま、めでたいこっちゃな」

シンジ「そうだね」

アスカ「ま、ここなら実体のあるレイに会えるしね」(夢の中のことは棚に上げている)

レイ 「…そうね」(口調は素っ気ないがうれしそう)

シンジ(そんな二人を見てにこにこ笑っている)

トウジ「…別に気にいらんとかいうわけやないが…なんやあの3人きれいにまとまってしもうたな」

カヲル「仲良きことは美しきかな、だね。前にも言ったかな?」

トウジ「ま、センセも散々ひどい目にあってきたからな。人生苦もあれば楽もあるっちゅうことや。ええ加減あいつらも幸せになってもええやろ」(やさしい目で3人を見る)

カヲル「君の心も美しいね。好意に値するよ」

トウジ「…わしにはそっちの気はないで」(やや離れる)

カヲル「洞木さんもいるし?」

トウジ「べ、別にわしとイインチョは…」

カヲル「僕はちっとも気にしないよ。さぁ怖がらなくてもいいんだ…ぐはっ!!」(地面にへばりつく)

アスカ「だからあんたはもういっぺん死になさい!!」

シンジ「…カヲル君、めっきりボケ役が板についてきたね」(別にやましいところはないのにわざわざ誤解を招く表現を使うんだよね)

カヲル「僕もそんなつもりはないんだけど…」

レイ 「(ぼそり)無様ね」

    一瞬にして気温が氷点下まで下降。

アスカ「レ、レイ。あんたがいうとリツコの10倍はキツイわよ」

レイ 「…そう?」

トウジ「ひー寒い寒い!」

シンジ「あ、カヲル君が凍ってる」

アスカ「第8使徒と同じで温度変化には弱いのね…ところでレイ、その手に持っての何?」

レイ 「?、ハンマーだけど」(両手で16tと書かれたハンマーを引きずる)

アスカ「…リツコね」

レイ 「ええ」(…どうしてわかったのかしら?)

トウジ「なぁシンジ。なんか綾波って渚のことを目の敵にしとらんか?」

シンジ「そういえばそんな気がするね」

カヲル(首から上を溶かして顔を出す)

   「それは嫉妬だね。同じシンジ君の心の存在、希望でありながら僕は実体を持ってシンジ君のそばにいる。アスカ君がいるにも関わらずシンジ君に好きと公言できる」

アスカ「…わかってんなら話は早いわ。レイ、やっちゃって。粉々に出来ないのは残念だけど自分がギャグ要員だということを身をもってわからせてやるのよ」

レイ 「わかったわ」(おもむろにハンマーを持ち上げる)

シンジ「ちょ、ちょっと二人とも」

トウジ「センセ、自分の身が可愛かったらおとなしゅうしとけ。どうせ死ぬようなタマでもないやろ」

カヲル「ははは、リリンの心は哀しみに満ちているね」

レイ 「そう、よかったわね」(振りかぶる)

カヲル「ふふん♪」(ATフィールド展開)

アスカ「あ!」

レイ 「………」(構わず振り下ろす)

    パキーン!! グチャッ

レイ 「…使徒殲滅完了」

アスカ「…今、フィールドを中和しなかったわよね」

トウジ「なんやあっさり割れよったけど…」

シンジ(レイからハンマーを借りる)

   「えーとなになに………ロンギヌスの鎚、量産試作型?」

レイ (どこかへ電話を掛けている)

   「…実用試験結果は良好。十分実戦に耐えると判断します」

シンジ「…えーとりあえず次回ものんびりしたムードがつづく、のかな?」

 

つづく

予告

遂に式を挙げるミサトと加持

延びに延び首がキリンになっていたミサト

それでも二人の挙式は平和が訪れた証の筈であった

だが幸せを手に入れる者がいれば失う者もいる

そんな現実にシンジは何を想うのか

次回、新世界エヴァンゲリオン

第弐拾四話 秋風に歌う

さーてこの次もサービスしちゃうわよん!




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