2rdステージ 壱六

     〜消える自分・生まれる生活〜

 

 

 

 

 

そして、使徒が来た。

パターンオレンジ・・・

よくわからない使徒だ。

EVAに乗る時も、綾波は僕を極力避けるようにしていた。

「ミサトさん・・・・・何があっても・・・・心配しないでください」

「え?」

そう言って僕は出た。

「シンジ!あの球体・・・・なによ!」

「知らないよ・・・・」

アスカはライフルを打ち込んだ。

途端に、球体が他の場所に現れ、影が迫り来る。

「アスカ!綾波!近づくな!」

「なんでよ!」

「いいから!」

僕は、自らそのディラックの海へと沈んでいった。

そこで、ATフィールドを強力に展開した。

しかし、効かない・・・・・・

過剰シンクロか・・・・目覚めるしか無いようだ・・・・・・

「信じてください・・・・ミサトさん」

そして、消えた。

「いかりくん!碇君!碇君!」

「シンジ!どうしたのよ!なんで消えたのよ!」

そこに、通信が来た。

「二人とも戻りなさい」

「でも!」

「いいから戻りなさい!命令よ!」

 

 

ネルフ

「リツコ!あれはなんなのよ!シンジが・・・・・・」

「碇君・・・・・・」

「あれは・・・・・ディラックの海と呼ばれる虚数空間よ多分ね・・・・・・他の宇宙と繋がっているかも・・・・・・」

「どうするのよ・・・・・」

「・・・・・・・・・・シンジ君がああ言ったんだから・・・・初号機の活動限界になったらN2兵器を現存するだけ撃ち込むわ。

使徒のATフィールドはあなた達が中和」

「・・・・・・・・・・・」

「碇君・・・・・・・どうして・・・・・・・・」

「レイ・・・ちょっと来なさい!」

アスカはレイを無理やり引っ張っていった。

「あんた・・・・何でシンジを苦しめるの?」

「・・・・・私がいるから・・・・存在するから碇君を苦しめる・・・・・・」

「違うわよ!」

「・・・・・私の存在は迷惑なのよ・・・・・世界を破滅させられるから・・・・・サードインパクトのカギだから・・・・」

「なに言っているのよ!」

「・・・・・・・・・・・私は・・・・人間ではない・・・・・使徒と人間のクローン・・・・・」

絶句している。

口をパクパク動かして・・・・レイを見つめている。

「・・・・第二使徒リリスと、碇君のお母さん・・・碇ユイから作られたクローン・・・・・ユイさんは初号機に取りこまれているわ・・・

そのサルベージに失敗して私が出てきた・・・・・・遺伝子上は・・・・・使徒・・・・・・・ATフィールドもつかえる・・・・・・」

目が点になり、あたふたと・・・・・・

「・・・・碇君は・・・・すべてを・・・」

「あんた!それでシンジを!・・・・・・許さないわ・・・・化け物!」

「そう・・・だから・・・碇君に迷惑をかける・・・・・・私はいたらいけない・・・・・でも・・・・スペアはたくさんある・・・死んでも・・・・

死ね無い・・・・・・化け物よ・・・・・・」

「あ,,,,あ・・・・・・シンジは・・・・知っているの?」

「ええ・・・・・・全てを知っているわ・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・それなのに・・・・あなたのことを・・・・・・・」

「・・・・・・私はわかったわ・・・・スペアを壊して・・・・私も死ぬ・・・・碇司令の人形ではなくなる・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

アスカは複雑な気持ちだった。

使徒なのに、シンジはレイを好いている。

使徒なのに・・・・・・

 

 

 

 

ディラックの海 内部

「電力を落して・・・・・・15時間は持つな・・・・・・」

これからどうしよう?

母さん・・・・目覚めてくれない?

母さん・・・・・・起きてよ・・・

起きてよ・・・・・・

起きろよ糞婆ぁぁぁぁ!

<シンジ!親に糞婆ぁは無いでしょう!>

「あ、起きたんだ。よかった・・・・・・」

<全く・・・・・・あの人も酷いわね・・・・・・>

「で・・・・・助けてくれない?」

<そうねぇ・・・シンジはアスカちゃんとレイちゃんどっちが好きなの?>

思いっきり関係ない事だ。

「二人ともだよ!」

<あらあら・・・あの人そっくり。キョウコと私とで二股かけたから・・・・・>

「・・・・・とにかく・・・・助けてくれない?」

<じゃ、あなたに負担が無いように暴走するわね。シンジは制御できると思うわよ>

「暴走じゃないか・・・・・」

<いいから!集中しなさい!>

母さんってこんな性格だったのかな?

怖いな・・・・

父さんがああなるのも無理は無い・・・・・・

<聞こえているわよ。ここは何処だと思っている?>

「あ・・・・・ご免なさい・・・・・・」

<まぁ・・・・・いいわ>

よくわからないよ・・・・・・

綾波・・・・・大丈夫かな?

アスカはどうかな?

帰ったら殴られるだろうな・・・・・・

どうしよう?

逃げちゃ駄目だ・・・・・・

初号機が唸った。

シンジも、体が重くなるのを感じた。

「凄いや」

<まぁ・・・・助けるわよ>

結局、制御は僕の元にあった。

ATフィールドを展開する。

いつもより簡単に強力な物が展開された。

 

 

ネルフ

「使徒に亀裂が!」

「パターン青消滅!」

「初号機発見しました!」

リツコが、モニターを見ながら嘆いた。

「・・・・・・悪魔ね・・・・・」

はねを6つ生やした悪魔の姿・・・・

黒い地が初号機を包む。

初号機

<暴走っていってもS2機関を作動させただけよ>

「え?だってあれは・・・・・・」

<ゲンちゃんがリリスから内緒で抜きとって入れたの>

「ゲンちゃん・・・・か・・・・・・」

<これからは、考えるだけでS2機関を作動させられるわよ。頑張ってね、未来を変える為に>

「え?知っているの?僕が未来から帰って来た事・・・・・・」

<私を舐めているわね?あなたのお母さんは感が鋭いんだから>

「そうみたいだね・・・・ありがとう母さん」

<ええ、これからも困ったら起こしてね>

「うん、頑張るよ、でも、始めから母さんを起こしておくんだったなぁ・・・・・・かなり楽になったのに・・・・・・」

<楽はいけないわよ、二人を幸せにして上げてね>

「二人を…か・・・僕は人類を救うんだけどなぁ・・・あんな世界もうみたくないもん」

<救助隊が来たわよ>

 

 

同じ頃   ネルフ

 

「初号機との通信、不完全ですが多少生きてます!」

「聞かせて!」

「え?知っているの?ぼくが・・・・・・・来た事」

「そうみたいだね、ありがとう母さん」

「・・・・・・・初めから母さんを起こしておくんだったなぁ・・・・・かなり楽だったのに・・・・・・・」

「・・・・どう言う事です?」

「・・・・・・司令!」

「うむ、わかった」

 

 

ヘリ

 

「あ、アスカ、綾波」

「なに暢気なのよ!」

「あ、ご免ね」

バッティーン!

っと心地よい音が響いた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「綾波?どう?心の整理は出来た?」

「・・・・・・・・・・私は・・・・・スペアを壊して・・・・死ぬわ」

はっきり言って驚いた。

綾波がここまで考えているなんて・・・・・・

「綾波・・・・父さんに何を言われたの?」

「・・・・・・・・碇君を不幸にする・・・・・・災いのもとだって・・・・・・」

父さんらしいね・・・・綾波を潰そうとするなんて・・・・・・

「で?」

「・・・・・・・私は・・・・・いかりくんを愛する権利はない・・・・・いかりくんを不幸にするなら・・・・・私は死を選ぶわ・・・・」

ここまで言うなんて・・・・

よっぽど父さんの言う事が効いたらしいな・・・・・・

「僕は、綾波がいて迷惑だなんて思わないよ?不幸にもならない」

「・・・・・本当?」

「本当さ、それに、人を愛するのに、権利は要らないよ」

「・・・・私は・・・いかりくんを(ヒック)愛して・・・(ヒック)いいですか?(ヒック)いかりくんの事を・・・・

見ていたいと思って・・・(うぐっ)いいですか?ずっと・・・・一緒にいたいと(えぐ・・)思っていいですか?」

それは、とても素直な言葉だった。

「いかりくんに(ヒック)迷惑が・・・かかるかも知れないけど・・・(ぁぐ)一緒にいて・・・・いいですか?

で、でもっ!・・・・(ぇぐ!)うぅぅぅぅ・・・・・ご、ごめっ・・・・んな・・・さい・・・・・・人間じゃないのに・・・

(ヒック)・・・・あなたを・・・・あ、あ・・・愛して・・・・い・・・ですか?」

泣き声をあげながら、必死でシンジに言うレイ。

レイの視界はすでにぼやけている。

僕は、綾波をキツク抱きしめた。

「あ・・・・アグッ・・・・・いかり・・・・・くん・・・・・」

「大丈夫だよ・・・・少なくても・・・・僕は迷惑しない・・・・不幸にならない・・・・」

目の下も、鼻の下も、頬も真っ赤にしてシンジの胸の中で大きな声で泣いている。

髪をそっと撫でて、頬にキスをする。

「いかりく・・・ん・・・・ずっと・・・・こうして・・・・いた・・い・・・」

「いいよ、さぁ、もう着くからね・・・・・・こうしてって言うなら・・・抱っこして帰るの?」

「わ、私・・・は・・・・・・・・帰って・・・・・い・・いの?」

「うん、あそこが僕らの家じゃないか」

「う、うぐっ・・・・・・ヒック・・・・・いかりくん・・・・暖かい・・・・・」

僕は、抱っこじゃきついから、綾波をおんぶして帰ろうとした。

でも、父さんとリツコさんに止められた。

「帰るよ、体におかしなところは無いから」

「いや、お前はこれから監禁だ」

「罪状は?」

「命令違反」

「まぁ・・・・3日がいいところだね」

「いや、無期限だ」

「知らないよ?前から言おうと思っていたけど・・・・母さんは全部見ているよ?」

「なに?」

「母さんは、僕の思考を通して全て知っているんだ」

「・・・・・・・・・・・・・」

「それにね、母さんが1回で完全に目覚めちゃったからね、今は僕が合図するだけで動くんじゃない?」

カマかけてやった。

上手く乗るだろうか?

「電力は供給されて無いぞ?」

「S2機関さ、母さんも協力するだろうから・・・・初号機だけで世界を破滅させられるよ?」

「・・・・・・帰っていいぞ・・・・」

「後・・・・ダミーシステムは完成させないよ。綾波を利用されてたまるかってんだ」

「お前は・・・・・何を知っている?」

「さぁ?綾波は寝ちゃったし・・・もう帰るよ」

二人は僕を睨んでいた。

その場には、ミサトさんもいなかったので助かった。

ただ、アスカがいた。

 

 

「シンジ、重くないの?」

「あ、まぁ・・・・軽い方じゃない?気持ちよさそうに寝ちゃって・・・・・不安で寝れなかったんだろうね・・・・」

「シンジ・・・・あんた・・・・何を知っているの?」

「そうだね・・・・・・簡単に言うと・・・・全部かな?」

「たとえば?」

「そうだね・・・・使徒が来るタイミング、どう言うやつか、あとは・・・・今度弐号機に乗るときは、ママに話しかけてみな」

「はあ?アンタってぇ、ば」

「ばかじゃないよ、初号機には僕の母さん、弐号機にはアスカのママの魂が入っているんだ。

弐号機は体だけサルベージされたから、体を持っている方はおかしくなったんだ」

歩みを止めてしまった。

アスカは、ただビックリしている。

「大丈夫だよ、アスカのママは、ちゃんとアスカを見ていてくれたんだ」

僕は、いつもの微笑でアスカをフォローした。

顔が赤くなっているアスカは、俯いてしまった。

「反則よ・・・あんたの微笑み・・・・・それに・・・・・・・私もレイみたいにしたいのに・・・・ずるいわ・・・・」

「あ・・・・・・・・・・アスカは・・・・・綾波がいない間に・・・・・・」

 

 

そして、家に着いた。

 

「おんぶしながら料理って言うのもね、起きて、綾波」

「・・・・・・・・・ハイ・・・・・」

「あ、起きていた?」

「いいえ・・・・今起きたの・・・・ごめんなさい・・・・」

「誤る事無いよ、僕はこれから夕食を作るからね」

「・・・・・・・・手伝うわ・・・・・いえ、手伝わせて・・・・・・お願い」

「どうぞ」

ヤバイわ・・・・レイにシンジを取られる・・・・

私も・・・・・

無理ね・・・・・料理だけは駄目・・・・・・

強敵ね・・・・レイって・・・・・・

「アスカ!綾波から大体聞いているんだろ?これから教育係になってあげてよ!」

「嫌だといったら?」

「頼むよぉ!

「キス1回で1日分」

「うぅぅ・・・・・・じゃあミサトさんに頼むよ、強引な性格になっても知らないよ」

不味いわね・・・・ミサトみたいになったら・・・・・・

「わかったわよ!明日からね!」

「ご飯食べてから!」

「はいはい!」

これも・・・・幸せなのかな?

私は・・・・どうなんだろう?

「たっだいっま!ご飯は?」

「もう出来ますよ、ちょっと待ってください!」

「ハイハイ、シンちゃんの料理なら待ちますよ」

 

綾波は、僕の言う事を聞いて、ちゃんと手伝ってくれた。

でも・・・言う事を聞くだけって・・・ロボットと同じなんだよな・・・・・

 

「あら?レイも手伝ったの?いただきます!」

「いただきます!」

「・・・・・いただきます・・・・」

「はぁ・・・・食器洗いはアスカにやってもらおうかな?」

「嫌よ」

「私がやるわ・・・碇君・・・・」

不味い・・・

「私がやる!あんた達にばっかりだったからね!」

「・・・・・アスカも素直じゃないわねぇ、シンちゃん手伝わせて!って言えばいいのに」

このやろう・・・・・

殺気がこの空間を包んだ。

しかし、

「美味しい・・・・久しぶりの・・・碇君の・・・ご飯・・・・」

と言う言葉で、笑いの渦が巻き起こった。

「で?今日のシンちゃんはどうやて助かったの?」

「リツコさんに聞いてください」

口をへの字に曲げて抗議している。

「リツコさんが教えてくれないなら、機密なんですよ」

眉が釣り上がった。

「早く食べてくださいよ、アスカに食器の洗い方を教えないと・・・・」

「うっさいわね!洗い方くらいわかるわよ!」

結局、その日に五枚の皿が割れた。

理由は、洗剤で滑っておっこどしたからだ。

当然、食器洗い用の洗剤だ。

「アスカ、片付けは僕がやるから、綾波とお風呂に入ってきて」

「えぇ〜?なんで二人で?」

「先生だからだよ、隅々教えてあげて」

「???わかったわ?」

わかってないだろう・・・・・

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