2rdステージ壱七

        〜平和な一瞬〜

 

 

 

 

「あたし・・・・いかりくんと入る・・・・一緒にお風呂に・・・・・」

ペシっとアスカの指先がレイのおでこに決まる。

「あんたね、シンジも男なんだからね」

「・・・・・・・ずっと一緒・・・・・」

どうしよう?

ミサトさんに助けてという眼差しで見たけど・・・・

「海パンでも履いて、一緒に入ったら?」

だってさ・・・・・・

三人で、水着を着て一緒にお風呂に入る事になった。

当然、僕は最後まで暴れて抗議したけど・・・・

綾波にああ言ってしまった手前、もはや逃げ道は無い。

「さすがに洗う時は後ろ向くからね?」

「見なさいよ、どうせ兄弟のようなものでしょう?」

「ま、まぁ・・・・・・親近感的に・・・・従兄妹くらいかな?」

冷静に判断してしまった自分が情けない・・・・

綾波に見られてしまった・・・・

「いかりくん・・・・私と・・・兄妹なのが嫌なの?」

「チ、ちがうよ!そう言うんじゃなくて・・・・・」

「じゃあどうなのよ?シンジ」

「だから・・・遺伝子上はそうかも知れないけど・・・・感覚的に・・・・」

僕は、墓穴を自ら掘っていた。

「なに?私と・・・・・感覚的には・・・・従兄妹なの?」

「・・・・うん・・・」

その穴へと飛びこんで砂をかぶった・・・・・

もはや、いい訳は聞かない・・・・

「だぁぁぁぁ!わけわからなくなってきた!」

「ったく・・・・レイ、体洗うわよ」

「・・・・・・・・洗った事無い・・・・・いつもシャワー・・・・・・」

「えぇぇぇぇぇ!」

「まぁ・・・テストのときに嫌ってほど洗うから・・・・いいんじゃない?」

男の考え方はアスカに却下された。

「まさか、洗いかたから教えるとは・・・・・・レイ!ちゃんと見ておきなさい!」

「・・・・いかりくん・・・・教えて・・・・」

僕は逃走していた。

「ミサトさん、酷いですよぉ!

「あら?そうかしらん?」

「だぁぁぁ・・・・・僕の気にもなってください・・・・・二人を襲うわけにはいかないんですから・・・・・・」

また墓穴を掘った気がした。

「じゃ、私なら襲うのね?楽しみだわぁ」

「ちょっと!」

「ささ、ベッドへ・・・・」

冗談は、休み休み言ってもらいたいものだ。

「もう疲れました・・・・おやすみなさい・・・・・・」

僕は寝室に行った。

「やっぱり普通の男の子よね?」

 

 

風呂場

「ヒック・・・・ヒック・・・・エグッ・・・・いかりくん・・・・・・」

「あんたね!いつまでもシンジを独り占めさせないわよ!」

「・・・・・あなたも私と同じなのね?クスクス・・・・」

すっごい変わりかたね・・・・

「リンスして・・・・はい!湯船に浸かって!」

「・・・・・いかりくんが居ない・・・・・」

「とっくに逃げたわよ!」

「・・・・・上がる・・・・」

「だぁぁぁぁ!早く浸かりなさい!」

「怖い」

ショートコントである・・・・・・

ガラッ!っと風呂から上がり、拭いて、服を着る。

「いかりくん・・・・・・」

「さっさと寝るわよ!」

「・・・・・・ずっと一緒・・・・・・一緒に寝る・・・・・・」

ミサトは、まだ起きていた。

「あらん、いいじゃない?レイとシンちゃんが一緒に寝ても」

「駄目に決まっているでしょ!

「あら?アスカがシンちゃんにやった事・・・・・・教えちゃおうかな?」

「う・・・・・・鬼・・・・・」

「決定ね?レイ!一緒に寝てきなさい!」

「ありがとうございます」

小走りにシンジの部屋へ向かった。

キィ・・・・・

パタン

トコトコ

パサッ

スルスル

 

シンジは、寝ていた。

レイも、シンジの左横に入った。

 

「いかりくんの匂い・・・・・いかりくんの寝顔・・・・・」

この日のシンジは、何ヶ月振りかに熟睡できた。

ただ、レイが添い寝していたからではない。

レイが帰ってきて、安心したのである。

体の疲れはシンジの睡眠時間に関係しない・・・・・・

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

「ん・・・・・いい匂いが・・・・柔らかい?」

ユサユサ

ゴロン!

ユサユサユサ

ん・・・・・フン・・・・・・

ユサユサユサユサ

アフン・・・・・・・・

ユサユサユサユサユサ

「あぁぁぁあ」

「あぁぁぁあ?・・・・・・・・これって・・・・・・・」

ゴロン!っと左側を向く。

蒼い髪がシャンプーの匂いで鼻をくすぐる。

完全に安心し切った安らかな寝顔がそこにある。

そして、手を動かすと、表情が少し変わる・・・・・

「・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁああああ・・・・・アスカので一回体験してなかったらパニックだよ・・・・」

珍しく平気なシンジ

「綾波、起きてよ」

「ん・・・・・・・・」

「起きないの?」

「ふ・・・・・・・ん・・・・・・・」

「ははは、かわいい寝顔です事・・・・・・」

「いか・・・・り・・・・くん・・・・・・・私・・・を・・・・・捨て・・・・ない・・・・で・・・・・・」

そんな夢見ないでよ・・・・

「綾波、捨てないから・・・・起きてくれない?」

「ん!・・・・・・・いかりくんだ・・・・・」

「おはよう綾波」

「いかりくん!」

ダキッ!

っと、昨日に増した強さで抱きついてきた。

僕も、ちゃんとキツク抱きしめていた。

 

「どう?落ち着いた?」

「いい匂い・・・・いかりくんの匂い・・・・・・」

「綾波もいい匂いがするよ?」

「んふ・・・・・おはよう・・・・」

「でさ・・・・起きない?」

「起きない・・・・ずっとこのまま・・・・・暖かい・・・・・・」

綾波とこうして寝たのって初めてだけど・・・・僕も安心する・・・・

消えないで、ここにしっかりと綾波がいるから・・・・

綾波って柔らかい・・・・あの時のアスカは体が強張っていたから・・・・かたかった・・・・

そんな事言ったら怒られるな?

「さ、起きよう。一緒に朝食を作ろうよ」

「・・・・一緒に?」

「そ、一緒に」

「うん・・・・起きる・・・・・・」

こうして、起きる事に成功。

まだ、アスカもミサトさんも起きていなかった。

ただし、ペンペンは起きていた。

「おはようペンペン」

「くわぁぁ!」

「お腹減ったかい?」

「ギャワ!」

どう考えてもペンギンの泣き声と思えない・・・・・・

朝食を作り、二人を起こしに行く。

 

「ミサトさん!起きてください!起こしましたよ!」

「はぁ〜いよ~・・・・・・」

 

「アスカ!起きて!」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「アスカ?」

「・・・・・・・・・・・」

僕はアスカのベッドへ歩み寄った。

「アスカ?寝てるの?」

ガバッ!

ガチッ!

ズルズル

引きこまれた・・・・・

「あいつにばっかりシンジを独り占めさせるわけないじゃない」

「・・・やっぱりそんな事か・・・・・・朝食出来ているよ」

「いいから・・・・ちょっとこのままで・・・・」

綾波と同じように抱きついてきた。

「アスカはいつから甘えん坊に?」

「・・・・・・違うのよ・・・・ただ・・・あんたが・・・・いつか消えちゃいそうで・・・・・・昨日みたいに・・・・」

そうかも知れない。

全てが終わったら・・・・僕の存在が消えるかも知れないし、量産型との戦いでも・・・・・

決して僕は安全な事をしているわけではない。

「アスカも・・・綾波と同じ匂いがするね」

「シャンプーでしょう?」

「うん・・・・優しいにおい・・・・」

(シンジの匂い・・・・レイが言っていたけど・・・・いい匂いね・・・・・・)

ガチャ

「あら?シンちゃんもなかなかやるわね?」

「うっさいわね、私が引きこんだのよ」

「まぁ、私はALL OKよん!勝手にして」

僕は、本当にこの保護者でいいのか心配になった。

 

今日は、戦闘の次の日と言う事と、綾波が帰ってきたので出かけることにした。

 

「二人とも布団干して!僕はミサトさんのやるから!」

「はい」

「わかったわぁ〜」

本当にわかっているのだろうか?

シンジの部屋

「いかりくんの匂い・・・・」

ガバッ!

トテトテ・・・・

コロン!

ガバ!

トテトテ・・・・

コロン!

 

持ち上げて歩くが、いい匂いで力が抜ける。

 

「レイ!早くしなさい!」

「いい匂い・・・」

最終的に、シンジの布団にもう一回包まってお休みモード突入していた。

「こら!」

アスカはレイに飛び乗った。

(ヤバイ・・・・・本当に・・・シンジの匂いだ・・・・力が抜ける・・・・・・)

「あのさぁ!まだ?終わらない??」

シンジ登場

「なにやってんの?」

「・・・・・シンジの匂い・・・・・」

「いかりくんの匂い・・・・」

一歩間違えれば変態だ。

「そんなに僕の体って汗臭いかな?」

「違うわよ・・・あんたの匂い・・・・」

訳がわからないのでリビングの掃除に向かったシンジ・・・・

「レイの言った事もわかるわ・・・・・シンジがここにいる感じがする・・・・・・」

「いかりくん・・・・・」

結局、シンジの布団は他の布団より1時間干すのが遅くなった。

「今日は・・・・何処に行く?」

「そうねぇ・・・・町を三人でブラブラしましょう」

「ええ・・・・・一緒なら何処でもいい・・・・」

もしかして・・・・今は、「絆」より、「一緒」がキーワードなのかな?

よくわからないよぉ・・・・

 

そうして、商店街を回ったりして時間を潰した。

左には綾波、右にはアスカがくっついて・・・・・

ケンスケに見つかったら証拠写真を買わされるだろう・・・・

そして、学校の前を通った時。

「センセ!サボるなんてせこいで!」

「シャッターチャンス!」

「碇君!あなたはそう言う人だと思ってなかった!」

どう言う人だ?

「はぁ・・・・昼休みだったんだ・・・・・・」

僕は、明日なに言われるかわかった気がする・・・・

「今日は昨日戦闘があったら休暇もらったんだ!明日は行くよぉぉぉ!」

最後は絶叫だったかも・・・・・

そして、走って逃走。

喫茶店で、昼食を軽く採り、公園で休憩した。

「まさか見つかるとはね・・・」

「これからどうする?」

「・・・・・・・・一緒・・・・・」

はぁ・・・・・・帰ろうかな?

 

 

結局、公園で日向ぼっこをしていた。

 

その夜も、綾波は僕の布団にもぐりこもうとしたが、アスカに拒まれて泣きながら出ていった・・・・・・

「まぁ・・・いじゃない。シンちゃんは襲うような事しないし!」

するかもしれませんよぉ・・・

僕だって男ですよぉ!

前の時間だって・・・・アスカと・・・・・

あぁぁぁぁ!

思い出したら体が動くから・・・・・

 

苦悩の末、やっと眠りについた。

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