───八月。


 夏休み第二週である。

 夏休み第一週は孕んで・・・・・・・・・イヤイヤ、波乱で幕を閉じた。


 心の傷も癒えたシンジはいつものメンバーで夏休みの宿題をやっていた。


 逃亡しまくったお陰で、ドスゲェ課題をプレゼントされたケンスケも一緒である。


 ざっとシンジたちの4倍はあった。


 縦に積んだらマンガの中に出てくる宿題の高さがある。

 それはそれで笑えるのだが・・・・・・・・・。


 「なんで俺だけ・・・・・・・・・」


 ハッキシ言って自業自得以外の何物でもないのであるが、文句が口に出てくるのは仕方が無い。


 「うっさいわね〜〜・・・・・・出来てるトコを見せてあげてるんだからグタグタぬかすんじゃないわよ」


 好きでもない漢字を書かされているのだから、すこぶる機嫌の悪いアスカ。


 大声出さないのは、ここが学校の図書室だからである。


 『流石に人数が多すぎて家のリビングは使えましぇ〜ん』

 と、学校でやっているのだ。


 まぁ、“シンジとの愛の巣”に、ケンスケみたいなヤツを入れたくないというのが本音だったりするのは公
然のヒミツである。


 どっちにしても、確かに人数が多かった。


 シンジ、トウジ、カヲル、ケンスケ、アスカ、レイ、ヒカリ、マナの計八人であの部屋はキツイ。


 「レイちゃん、数学終わった?」

 「ん〜〜・・・・・・もうちょっと・・・・・・マナの方は国語終わったの〜?」

 「書き取りはね。文章問題はまだよ」


 宿題は分担作業になっている。

 それぞれが得意分野をクリアして後で写すのだ。

 数学がアスカ担当ではなくレイなのは、日本の数学には『虚数』等の漢数字があったりするからである。


 英語はアスカの独壇場だ。


 ただ、『この文章の助動詞はどれか?』とか、『この文章の接続詞を指せ』等の“こんなモン、絶対日常的
には使わねーだろ!”という、けったいな問題はシンジに教えてもらっている。




 当然、トウジはヒカリに教えてもらっている。

 時折二人の肩が、チョンっと触れて慌てて離れる辺りが初々しくて身悶えしそうな光景だ。




 もっとも、

 「ねぇ、シンちゃん。ここの関数計算なんだけど〜」

 「シンジくん、この文章ってドコまでが区切りなのかな?」

 「ちょっと、シンジ。ココ、なんて読むの?」

 と、必要以上にくっ付くのもナニではあるが。



 非常に蚊帳の外状態のケンスケの居心地の悪い事悪い事・・・・・・。




 「ぐすん・・・・・・いいさ、俺だっていつか俺の事を理解してくれる彼女ができるさ・・・・・・俺だって・・・・・・俺
  だって・・・・・・」


 ちょっと危ない方向に向かっていた。


 そんな彼の肩にポンっと優しく手を置く者がいた。


 「大丈夫だよ相田君」


 カヲルである。


 「・・・・・・カヲル・・・・・・」


 涙に潤む眼を向けると、カヲルは実に優しそうな微笑を浮かべ、ケンスケに一枚のディスクを差し出した。


 「・・・・・・・・・・・・・・・これは?」



 「アンダーサイドのサークル<ぜぇれ>の新作“Eva”さ。このディスクの中身を君のバソコンにインス
  トールすれば、君のPCにカワイイ人造少女“EVA”が住んでくれるって寸法だよ」


 カヲルは、とても優しそうに微笑んだ。


 「君の彼女は電源を入れたらモニターの中で微笑んでくれるんだ」


 「いやじゃああああああああああああああああああああああっ!!!!!」



 ケンスケ、涙の大絶叫であった。







                    はっぴい Day’S

                   10・STEP 掃除の乱







 「お兄ちゃん・・・やりすぎよぉ」

 「ごめんよマナ。相田君のゲシュタルト壊すのが面白くて・・・・・・ついね」


 結局ケンスケの絶叫が元で、登校していた図書委員の山岸マユミ嬢に、


 『みんな出ておゆきっ!!!!!!!!!』

 
 と、全員叩き出されてしまったのだ。



 まぁ、ケンスケ以外はかなり進んでいたので、あまり怒ってはいない。


 半分近く進ませていたりする。

 夏休み前半部で終わらせていれば、後は遊びまくるだけなのだ。

 もっとも、ある程度の高校に進む者はピッチを上げなければならない時期なのであるが、この八人は関係
ない。


 シンジはある程度以上の高校に行く事もできるのだが、アスカたちと離れ離れになるつもりが無いので、
結局は全員の成績を平均した高校が目標だ。



 だから、今は遊ぶのがメインとなる。

 明後日も双子山にハイキングに行く予定である。



 「で、イインチョも行けるんかいな?」


 何気なくトウジが聞いてみる。

 本人に自覚がないのだが、けっこうヒカリを気にしていたりする。

 それを知ってか知らずか、ほんのり赤くなるヒカリ。


 「え? う、うん・・・・・・家の用事が終わったらね・・・・・・」

 「家の用事? あ、そっかヒカリって主婦みたいな事してたんだっけ」


 この辺りは“前”の世界のヒカリと同じだ。


 「うん。先週、海行ったからお姉ちゃんにイロイロ言われちゃって・・・・・・山に行く前にやらなきゃならな
  い事ができちゃったの」


 「な〜んだ。じゃあ、わたしたちで手伝ったらいいんじゃないの?」


 なんでも無い事のようにレイが微笑む。


 「ええ?! そ、そんなの悪いわよ!!」

 「水臭いわね〜〜・・・・・いつもお世話になってる委員長様に恩返しするだけよ」


 と、ウインクするマナ。
 妙にキュートな仕種が似合う。


 「そ〜やな・・・・・・ワイは力仕事しかでけへんけど毎日弁当で世話になっとし、いっちょやったるか!!」


 トウジは妙に乗り気だった。

 その言葉に、今度こそ真っ赤になるヒカリ。

 ぎこちない二人のその初々しい光景に頬を緩めるシンジ達。


 そんな中、アスカは考え込んでいた。


 「ねぇ、ヒカリって姉妹いたわよね?」

 「え? う、うん。コダマお姉ちゃんと妹のノゾミの二人だけど・・・・・・それがどうかしたの?」


 アスカの額の血管がミシリと音を立てて膨れる。


 「僕も行くよ。皆で委員長のお手伝いをしたら早く終わ・・・・・・」


 と、優しいシンジが最後まで言う前に、


 「アンタは留守番!!」


 アスカが拒否した。

 反対意見の進入を拒否する鉄壁の壁。

 少年にとって懐かしい“ジェリコの壁”が眼前に立ち塞がった。


 「・・・・・・え? なんで?」


 「なんでもかんでもないわ! ただでさえ大人数で行くのよ? ヒカリの家族とアタシたちが集まったり
  したら狭っ苦しいわよ。アンタはウチの部屋の方を片付けて、明日の買い物済ませて、用意を整えてお
  いてよ」


 「あ、そっか・・・・・・。ウン。わかったよ」

 そう言って微笑む少年に、鼻血を出す少女達(ヒカリ除く)であった。




               〜   〜   〜   〜   〜   〜   〜   〜   〜




 「ところで、なんで碇君は来させなかったの?」


 ファーストフード店で待ち合わせ、洞木家へ向かう道すがら、ヒカリが当然の疑問を投げてきた。

 家事技能<万能>を持つシンジがいれば作業がはかどる事間違いないのだから当然の疑問と言えよう。


 「洞木さんにお姉さんと妹さんがいるからでしょ〜?」


 すぐにレイが反応して答えた。


 「え?」


 「シンジくんの笑顔見て、二人が耐えられるって断言できる?」


 かなり真剣なマナの眼。


 「う゛・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 そういう事なのだ。


 凶悪にパワーアップしている天使の微笑みに瞬殺される可能性を感じ取り、アスカはシンジの訪問を拒否
したのだ。


 ヒカリにしても、姉と妹が自分の同級生に骨抜きにされるシーンなど見たくは無い。

 親友の機転に感謝するのであった。

 もっとも当の親友は、


 『だぁ〜れがシンジに近付く女を増やすもんですか!!』


 と思っていただけであったりするのだが・・・・・・それは言わないのがお約束である。


 今日の家事手伝い人メンバーは、

 アスカ、レイ、マナ、トウジ、そして(逃げられないように)簀巻きにされて引き摺られているケンスケ
の五人であった。

 カヲルはシンジの手伝いである。

 他の少女達にしてもシンジの手伝いとなると二人っきりになるチャンスではあったのだが、カヲルに止め
られたのだ。



 『洞木さんのお手伝いをやって、シンジ君の好感度アップという作戦もアリじゃないかな?』

 という言葉によって。

 もっとも、当のカヲル本人が二人っきりで買い物や用意をしているのだから、中々な策士と言って良いだ
ろう。




 しばらく歩くとヒカリの家が見えてきた。

 ここ第三東京市が開発途中という事もあり、あまり家並みは多くない。

 逆にぎちぎちに固められた家並とは違い、昔の風情がそこにはあった。


 ヒカリからすればアスカのようにマンションに住んでいる方に引け目を感じるのだが、アスカやレイ達か
ら言えば落ち着いた家並は憧れである。

 “前”の記憶がある為なのか、喧騒さを持たない風景がなんともいえない温かい気持ちをもたらせてくれ
る。



 「・・・ちょっと恥ずかしいけど・・・・・・入って」


 「「「「「おじゃまします(ごつっ)」」」」」



 ちなみに、最後の音は引き摺られていたケンスケが玄関で頭部を打った音である。


 「ああ、ケンスケ忘れとった」


 けっこー薄情な事を言いつつ荒縄(ドコで見つけたんだ?)を解くトウジ。


 「なんだこの扱いは?! 見ろ!! コブができちまったじゃないか!!」

 「うっさいわね〜〜・・・・・・ツバでもつけてけば?」


 アスカ達は冷たい。


 「うう・・・・・・」


 それでも谷底へ重石を付けて投げ落としてさらに岩を落とすようなカヲルがいないだけマシである。


 「あ、おかえり〜〜。その子たちが言ってた手伝い人ね?」

 中からヒカリに何となく顔立ちが似た女の人が出てきた。

 大学生の姉、コダマである。

 やや茶色に染めたストレートロングの髪、少々たれ眼気味なところがなんとも色っぽい。

 普段はナチュラルメイクでキメているが、流石に妹の友達が来る程度では化粧はしない。

 格好もラフなTシャツとジーンズである。


 「あ、ドモ。こんにちは」


 トウジが挨拶をする。


 「あら、トンちゃんも来たのね? いつも仲いいわね〜」


 からかわれて真っ赤になるトウジとヒカリ。

 ニヤニヤ度がアップするアスカ達。

 今のコダマの言い方から察するに、トウジが何度かこの家にやって来ているのが明白だからである。

 コダマはそんな少女達を見、矛先を変えた。


 「あれ? あなた、ひょっとして第壱中の惣流さん?」

 「え? あ、ハイ」


 どうして解ったの? と言う顔をするアスカ。

 解らない方がどうかしている。

 第壱中の制服、ヒカリの友達、茶色みがかった赤い髪、青い瞳。

 このデータからアスカ以外の女子が導き出されるのであれば病院に行った方がいい。


 「へ〜・・・・・・ふぅ〜ん・・・・・・噂通りの美少女ね〜・・・・・・」


 素直に感心するも、少なからず嫉妬の色もあるのは致し方ない。


 「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!!」


 親友をヘンな眼で見る姉を咎めるが、アスカは気にしていない。

 というか、慣れている。

 奇異の眼で見られることが日常化しているアスカやレイにとって、こんな事はなんでもないのだ。






 それに、







 真っ直ぐ自分を見てくれる男の子がいるのだから・・・・・・。





 「ああ、ゴメンね惣流さん」


 さして謝っている風も無いコダマ。

 こんな態度はミサトで慣れているので腹も立たない。


 「いいえ。で、ヒカリ、どう手伝ったらいいの?」


 とっとと話を切り上げて、目的を敢行することにする。

 残りの面々もそれに続いた。




               〜   〜   〜   〜   〜   〜   〜   〜   〜




 庭の草むしりから始まり、電灯の掃除、風呂磨き、トイレ掃除、壁のシミ取り・・・・・・。


 母親のいない洞木家で家事をしきっていたヒカリの仕事は多い。


 年末の大掃除と同レベルの掃除である。


 それでも人海戦術でバシバシ進む。


 二時間もするとほとんど片付いていた。


 「ふい〜〜〜・・・・・・けっこう働いたぜ」




 ごっ




 いきなり擂粉木(すりこぎ)で後頭部を殴られるケンスケ。


 「何言ってるのよ!! ほとんどわたしたちにやらせたくせに〜〜!!」


 台所の調理棚を片付けていたレイに殴られたのだ。


 「ああ〜〜・・・・・・六分儀さん・・・・・・その擂粉木まだ新しいのに・・・・・・」

 「あ、ああっ!! ごめんなさい・・・・・・弁償するわ・・・・・・」


 誰も心配してくれないケンスケ。



 「・・・・・・てやんでぃ・・・・・・」



 「ところで、妹さんはいないの?」


 マナと窓を拭き終わったアスカが口を開いた。


 「ノゾミ? あの娘だったら買い物に行かせたわよ」


 「え?」


 「だって、ヒカリの友達が来るって言うから、お茶菓子とかいるでしょ? 晩御飯の買い物だってやんな
  きゃいけないし・・・・・・」


 「お、お姉ちゃん! ナニ考えてるのよ! それじゃあ荷物が多くて持てないじゃないの!!」

 「え? ・・・・・・あ、そっか」



 『やっぱりミサト(さん)(先生)に似てる!!』


 声には出さなかったが、皆が同じ事を考えていた。



 ヒカリが妹を心配して時計を気にしている横で、


 「ねぇねぇ、惣流さん。ちょっとアルバイトしてみない?」


 とコダマが声をかけてきた。


 「イヤです」


 アスカは素っ気無かった。


 「ええ〜〜?! まだ何も言ってないのに・・・・・・」


 「じゃあ・・・・・・男の人紹介するからデートしてあげてなんて言いませんね?」


 「う゛・・・・・・」



 図星であった。



 大体、“前”の世界で、姉に命じられた形でヒカリに頼み込まれるのは体験済みなのだ。


 「ちょっとだけでいいからさ。ね?」


 「イヤよ。なんでこのアタシが得体の知れない男に付き合わなきゃいけないのよ?! 馬鹿にしないでよ
  ね!!」


 ヒカリの姉という事もあるので丁寧語を使っていたのであるが、もう地が出ていた。


 この“世界”の事ではないものの、自分にデートを斡旋した女であることを思い出したからである。


 「あ〜ら・・・・・・よかったね〜〜アスカ。シンちゃんに振られた時の滑り止めができたじゃないの」

 「ホント、うらやましいわよね〜」


 すかさずレイとマナが突っ込んだ。


 「な〜に言ってんのよ!! このアタシが振られる訳無いでしょ?! アンタ達こそキープ君でも探して
  もらったら?」

 「ざ〜んねん。あたしはシンジくんオンリーなの」

 「わたしもシンちゃん以外いらない〜」

 「むぅ〜〜・・・・・・」


 睨みあう三人の美少女。

 そのノリについて行けないコダマは手近なケンスケに問いかけた。

 
 「ねぇねぇ、ケンスケくん。さっきから話に出てくるシンジってどんな子なの?」

 「え? シンジ? う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・・」


 流石のケンスケの言い方に悩む。

 うかつな事を言うとエラい目にあわされるからだ。


 たっぷり一分考えて、


 「天然の女殺しかなぁ・・・・・・」




 どがんっ!!




 瞬間に、箒、ハンマー、庭石がケンスケを襲った。


 タラリ・・・・・・と汗を流すコダマ。


 『そんなに可愛い子なのかな? この子たちも若いのに、一人に絞らなくてもいいのになぁ・・・・・・』


 等とコダマが女子大生らしい事を考えていると、玄関先で妹の声がする。

 なんとか戻って来た様だ。


 「・・・・・・ごめんなさい。こんなところまで・・・・・・」


 『あれ? 誰かいるのかな?』


 「ううん。どうせ僕たちも買い物があったからね」


 『・・・・・・? 男の子・・・・・・?』


 「あ、その・・・・・・何もありませんけど、お茶でも・・・・・・」


 『ノゾミにしては大胆ね・・・・・・いつもはもっと人見知りするのに・・・・・・』


 「あ、いいよ。お構いなく・・・・・・ん? カヲル君、どうかしたの?」


 「シンジ君。この表札見てごらん」


 「・・・・・・洞・・・木・・・・・・? ここって・・・・・・委員長の・・・・・・?」


 「え? お姉ちゃんを知ってるんですか?」


 『?! シンジ・・・君? ひょっとしてこの子達が言ってた・・・・・・』




 どたんっ!!




 バタバタバタバタバタ・・・・・・・・!!




 駆け出す少女達。

 たちまち玄関で騒ぎが起こった。


 「シンジっ!! アンタ、こんなトコでナニやってんのよ?!」

 「え?! わぁ!! アスカ?! じゃ、じゃあ、ここってやっぱり委員長の家なんだ」

 「お兄ちゃん!! な、なんでシンジくん連れてきちゃったのよ!!」

 「やぁ、マナ。これは不可抗力さ。この女の子が買い物袋を破って困ってたからね。シンジ君が見捨てて
  いくと思うかい?」

 「シンちゃ〜ん・・・・・・部屋のお掃除はどうしたのよ〜?」

 「え? あ、あの・・・・・・終わっちゃったからお菓子の買出しに・・・・・・」



 少女達の誤算は、シンジの家事能力の高さを忘れきっていた事である。

 彼の能力に、黙々と手伝うカヲルが加わったのだ。とてつもなく早く終わるのも当然だ。



 「ホラ、アスカ。この子が怯えてるじゃないか! ゴメンね、ノゾミちゃん」


 ノゾミの声が聞こえなくなった。

 好奇心に駆られ、玄関に向かうコダマ。


 「さ〜て、噂のシンジ君は・・・・・・・・・・・・・・・・・・と・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 そして、固まってしまった。

 まず最初に眼に入ったのは、レイと同じような銀髪に赤い目のアルピノの美少年。

 赤いTシャツとジーンズというラフなスタイルが妙に似合っている。

 ワンポイントに紺のジャケットを引っ掛けているのは狙ってのことか?

 だが、優しげに微笑むその表情は作り物のようであり、脇を飾るのには向いているが男女としての付き合
いは不可能に思われる。



 しかし、その横にいる少年を見て、コダマの眼は動かせなくなった。



 短めの黒い髪、黒瑪瑙のような瞳、

 なぜか座り込んでいるノゾミを心配そうに見つめているその表情から、その少年が心底優しい少年である
ことが伺い知れる。



 『こ・・・・・・・・・これは・・・・・・なかなか・・・・・・・いえ・・・・・・と、とんでもない上物だわ・・・・・・・・・』



 それなりに男との付き合いのあるコダマですらこの少年の価値が計測限界値を超えていた。

 そんなコダマに少年は気付いた。


 「えと・・・・・・あの・・・・・・洞木さんのお姉さんですか?」


 「え? う、うん」


 声も、とてもイイ。



 「委員長・・・・・・いえ、洞木さんには、いつもお世話になってます」


 と、なんだか照れながら・・・・・・・・・・・・・・・・・・、





 シンジは微笑んだ。



























 その夜、洞木家では騒ぎが起こっていた。

 「お姉ちゃん!! どうしてシンジさんの事、教えてくれなかったの?!」

 「そ、そんなこと言われても・・・・・・」

 「ヒカリ!! どういう事なんだ?! シンジって男は誰なんだ!!」


 お茶の間で、仕事帰りの父と妹にヒカリが責められている。


 コダマの部屋では・・・・・・。


 「で、その碇シンジって・・・・・・うんうん・・・・・・え?! NERV本部の司令の息子?!」

 自分の友人や元彼からシンジの情報を電話で集めまくっていた。



 『家柄、顔、性格、技能、スゴイわ・・・・・・完璧じゃないの・・・・・・あたしとした事があんな上物を見逃して
  たとは・・・・・・・・・』



 「それに、ヒカリのヤツ・・・・・・あんな上物物件黙ってたなんてぇ〜・・・・・・・」


 とんでもなく思考が加速していくコダマ。



 「お姉ちゃん!!」

 「ヒカリ!!」

 「ちょっとヒカリ!!」


 『碇君のばかぁあああああああああああああああああああああああああっ!!』





 声にならないヒカリの絶叫は、どこまでも響き渡るのであった。





















 「ちょっとシンジ!!」

 「シンちゃん!!」

 「シンジくん!!」

 「シンジくん」


 「か、勘弁してよぉ〜・・・・・・」



 当然、こっちも責められてたりするのであった・・・・・・・・・。


作者"片山 十三"様へのメール/小説の感想はこちら。
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