前々から気になっている事がある。

 それは単純な事なのだ。

 単純な事であるから言い難いことであったし、言うことを忘れていたりする。


 だが、ヘタな事を漏らせば地雷どころかクレイモアの密集地に足を踏み入れる事となる。


 彼とてそれは勘弁してほしいトコロだ。


 だが、“好奇心、ネコを殺す”という言葉を知っていたとしても、ネコは好奇心をもって車道に立ち止まっ
て事故にあったりするし、メガネ男はポロっといらん事を抜かして死の扉を開ける。


 「なぁシンジ。惣流は六歳の時からの幼馴染って言ってたけど、六分儀や霧島と会ったのは何時なんだ?」


 カメラ眼鏡男ことケンスケは、目の前を歩く殿様&大奥連中を見つめながら、その“殿様”に問い掛けた。

 “殿様”ことシンジと、“大奥”達であるアスカ,レイ,マナ,マヤ,カヲル(おいっ)が仲良く歩いてい
たのが今更ながら気になったのである。

 ちなみに、マヤは第壱中学の保健室にいるリツコに用事があって一緒に向かっているのだ。

 よって、登校メンバーはシンジ,アスカ,レイ,マナ,マヤ,カヲル,トウジ,ヒカリ,ケンスケ・・・・・・
と9人組という大所帯。

 これだけ人数がいるからこそ言ってはならないセリフでもある。


 「え? ええ・・・・・・と・・・・・・?」


 そう言われてみたら何時なんだろう?


 シンジも初めて気になった。

 幼馴染というのは知っているが、アスカにしても、レイにしても、何時からだという記憶は無い。

 記憶が無いと言ってはいるが、思い出そうとすればどうにかなるかもしれない。

 とは言うものの、アスカを見て知っている“あのショック状態”は勘弁してほしい。


 何か良い方法はないのかな?

 だったらお医者さんに聞いてみれば・・・・・・と何気なく視線を移動させるとマヤと眼が合った。




 その、いつもあたたかい眼差しをくれる瞳は、




 いつもの見慣れた優しいものではなく、




 とても悲しげな色に染まっていた・・・・・・・・・。




 『え・・・・・・?』




 その事に気付いたシンジが声をかけようとした瞬間、


 「こ・・・・・・このメガネぇええっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 怒り狂ったアスカのリボルディングステークな拳がケンスケの脇腹にめり込んだ。

 「ぐぼぉっ!!!」

 とてもじゃないが人とは思えないような悲鳴をあげ、ケンスケは身体を横の“く”の字に曲げる。

 「シンジは記憶無くしとるっちゅーたやろがっ!!!!!!」

 「ぎょわぁっ!!!」

 けっこう長い付き合いのはずの級友に、関西弁の少年はナゼか手の甲にハートの紋章を浮かべ、その輝き
叫んでたりする手をケンスケの顔面に直撃させる。


 ふっ飛ぶケンスケ。



 ズシャァアアアアアアッ!!!!



 何故か顔面から“車田正美落ち”する。

 当然、何故かは知らぬがメガネはヒビが入った程度だ。


 しかしながら追い討ちをかける者には事欠かないのが現状である。

 「シンちゃんの心を傷つけたら殺すって言ったわよね〜」

 言ったかどうかは兎も角として、ドコからか無意味にでかい金色のハンマーを取り出すレイ。

 「碇君がどれだけ入院生活で苦労したのか知ってるはずよねぇ・・・・・・あなたのせいなんだし・・・・・・」

 なぜかドリルアームを装着しているヒカリ。ぎゅいんぎゅいん回転するドリルはとってもゲッターだ。

 「シンジくんが気にしたらどう責任とってくれるって?」

 どこから取り出したのか全身をキャノン砲の塊にしつつ、マナも殺意の波動を持ってマキシマムレベルで
シュートしそうな空気をビンビンに放ちながらにじり寄る。

 お前ら全員四次元ポケットでもあんのか?! と言いたくなるも、実は近くに潜んでいたシンジ用のガー
ドの黒服が手渡していたりする。



 いや、どちらにしてもケンスケの命はステキに危険が危ないのだけど・・・・・・。



 そして当然、カヲルは・・・・・・・・・、

 「シンジ君、どうしたんだい? 顔色が悪いけど・・・・・・」

 と、シンジを気遣っていた・・・・・・・・・。

 「え? あ、うん・・・・・・なんでもないよ」






 だが、カヲルすらも気付いていない。


 シンジの心に打ち込まれた楔は、想像を遥かに超えたところに突き刺さり、シンジの心の壁に亀裂を入れて
いた事を。


 もし、その事に気付いていたのなら・・・・・・・・・。

 ケンスケという存在はカヲルの手によって塵と化していたことであろう。


 そのケンスケの悲鳴を右から左に流しつつ、シンジ達は学校への道を急いでいた。



 その“楔”の第一歩はこうして打ち込まれたのであった・・・・・・・・・。






                             はっぴぃDay’S

                            27・STEP 決壊・・・・・・。




 安全確認、

 左右確認、

 車の影無しっ、


 てな事で横断歩道を渡る面々。

 シンジとアスカが交通事故から帰還してからずっと行われている行為だ。

 そこらにいる中学生等からは失笑をかうかもしれないが、彼らにとっては大真面目である。

 “笑いたきゃ笑え”だ。

 『あんなつまらん事で友達を、大切な絆を、シンジらを失って堪るかっ』

 と言う事なのだ。


 もっとも、現在のガードはマジ洒落になんないくらい強化されており、シンジらにヨッパライと判断され
た車が100m内に接近した場合、悪くてテルミット弾の餌食、良くても地下で“ジオ・フロント掘り”とい
うペリカ生活が待っていたりする。


 暴走族等の時代遅れの扱いはもっとひどい。

 シンジ達のいる方向を向いた瞬間に行方不明者リスト行き決定なのだ。


 そんな事を露とも知らず、安全確認をする少年達。

 まぁ、用心に越した事はない。



 そんなこんなで学校に到着する。

 中学と銘打っている割にヘタな“学園”の広さがある第壱中。

 マヤは医務室に用事があるので玄関でお別れだ。

 「シンジくん・・・・・・ここでお別れね・・・・・・・・・グスン・・・」

 「あ、あの・・・・・・マヤさん」

 まるで今生の別れのような涙を流すマヤにシンジも戸惑う。

 「でも仕方ないの・・・・・・ごめんね・・・・・・」

 ふわり・・・・・・と柔らかく抱きしめるマヤ。

 けっして豊かではないものの、大人の柔らかさに包まれて息が詰まる。

 「くぉおおおおらぁあああああああああああああああああああああああああっ!!!!」


 ぶぉんっ!!!


 見事な回し蹴りが赤い悪魔から放たれるも、身をかがめた二人の頭上を空振りする。

 するりとマヤが離れ、先に挨拶をするつもりなのか職員室の方へと駆けて行く。



 最後にシンジへウインクを送りながら・・・・・・。


 赤く染まるシンジ。


 そして、


 「へぇ〜〜・・・・・・シンちゃん言い度胸してるね〜〜・・・・・・」

 びくぅっっっっ

 「シンジくん、胸が好きなんだ・・・・・・ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・・」

 びくっびくっ

 「アタシの前で他の女とイチャイチャできるなんて・・・・・・強くなったものね・・・・・・・・・」


 嫉妬で赤く変身した隠忍・・・・・・いや鬼達がいた・・・・・・・・・。


 「じゃあ、ボクらは先に行くよ」


 ステキに爽やかな笑みを投げかけつつ、カヲルはトウジとヒカリを連れて教室へ向かって行った。

 ケンスケもいない。

 危険を察知して購買部に直行したのである。


 シンジは死を覚悟した。



 「覚悟は・・・・・・いい?」



 そう言ったのは誰だったか・・・・・・・・・?



 意識を失ったシンジに分かる訳もない。






 結局、シンジにナニが行われたのかは不明である。



 ただ、教室へと向かう廊下にいた男子達は嫉妬に狂っていたということは明記しておこう。





                *   *   *   *   *   *   *   *   *




 一見のどかであるが、実際に長閑な第壱中学の午後・・・・・・。


 一年生はいつもと変わらないし、

 三年生は受験や就職活動が待っている為、けっこう『こぉ〜〜んチクショ〜〜〜〜っ!!』である。

 では二年生は? と言うと、

 これがまた、お気楽にもウキウキしてたりする。



 “その日”は時間的にはまだ遠かった。



 しかし、12月という良い時期に敢行される事は生徒達にとっても喜ばしい事である。

 なにせ寒い時期。

 暖かいところへ行くのは生徒じゃないにしても望みだろう。

 よって、感覚的には物凄く近く感じる。

 まぁ、実際に一ヶ月くらいなのだし・・・・・・。


 予定では12月6日。

 アスカの誕生日の二日後である。

 アスカは誕生日が終わってからこの日へなだれ込む為、大いに浮かれていた。

 11月末にある期末を終わらせた後なのだから気楽なものである。

 シンジも浮かれている。

 そしてレイも・・・・・・。


 12月という月に行われるこの学校の行事・・・・・・・・・。

 第三東京市では冬である。

 だがそこは27℃以下になった事が無いそうだ。

 その場所は沖縄。


 第壱中学の一大イベント、OKINAWAへの修学旅行である。



 当然ながら二年生全員どこか浮かれているからして、シンジらも浮かれるのは当然だろう。



 別の意味で浮かれている事は誰も知らないことであるが・・・・・・。



 「“今回”は行けるんだね・・・・・・」

 「そうね〜・・・・・・」

 「シンジ、“今度こそ”ジャイアント・ストロング・エントリーを見せてあげるわ」

 「うん」



 クスっと微笑む少年。

 彼がそれを見たのは“潜溶岩服”ごしの事だった。

 “今回は”スポーティなアスカの泳ぐ様が見られる。

 明るくなったレイの笑顔が海で見られる。

 その事がシンジを浮かれさせているのである。









 ジジジジ・・・・・・・・・。




 『こぉらっ、バカシンジっ!!! もっと足を伸ばしなさいっての!!』




 パチッ







 「あ、あれ?」

 急に視界に映像が割り込み、いきなり素っ頓狂な声を上げるシンジ。

 「どうしたの?」

 覗きこむアスカも心配そうだ。

 「え? ううん・・・・・・なんでもないよ・・・・・・」

 「ホントにぃ?」

 「アスカがシンちゃんに負担かけてるからでしょ〜?」

 「ぬぁんですってぇ?!」


 「こらそこっ!! うるさいわよっ!!」

 何故かメジャーを持ったミサトが、それを持った手で指して注意する。

 しぶしぶ離れるアスカとレイ。



 今は六時間目のLHR。


 学校の“御達し”について話し合いの時間がもたれているのである。

 議題は・・・・・・・・・。



 『某“哀れな子羊”の扱い』である。



 哀れな子羊・・・・・・・・・所謂、スケープゴート。

 まぁ、有り体に言えば“相田ケンスケ”ということだ。


 彼の“悪い噂”はいつの間にか全校に知れ渡っていた。


 彼は“外ん道”であり、“鬼ちっく”であり、“ケダモノ”である。

 “仮”に、それが “噂”だけだとしても、証拠が揃えば真実だ。


 そして、証拠は揃い過ぎていた。


 まず第1。“ハルコ、謎の粘液疾走”

 例の“バナナシェイク隠し持って走ったら、何故か蓋がなかったからあたしの顔にかかっちゃってアヤシ
く見えてたかもしんないけど気にしないで♪”事件(長っ)である。

 途中、通りすがりの男子生徒に問われても、

 『ケンちゃんの・・・・・・為だから・・・・・・』

 としか言っていない。

 だが、どう客観的に見ても、いや〜〜ん♪ 誤解して〜〜ん♪ と言っているとしか思えない。


 そして第2。“オレ達は見た!! クスハちゃんは実在する!!”

 シンジとアスカが玄関の事務室前で、“携帯を持っているのに何故か”公衆電話をかけ終わったくらいに、
玄関からメイド服を着た少女、

 現在、第壱中学トップの人気美少女“クスハ”が、

 シンジに弁当の包みを手渡したのである。

 これには流石の男子一同、“色んな意味で”ブチ切れてシンジを問い詰めた。

 「え、ええ? こ、これ? ケンスケの忘れ物らしいんだけど・・・・・・・・・」

 というシンジのセリフ、

 それは、学校に漂っていた“クスハたんはケンスケに飼われている”という噂を鵜呑みにさせるに有り余
るセリフであった。


 フツーはコレくらいで信じる訳が無い。

 だが、あの“純情可憐なクスハたん”が“シンジの女装”という見たくもない現実より、

 “実はクスハたんは存在して、ケンスケのクソ野郎に飼われて好き勝手されている”という、なんか矛盾
だらけの“幻想”の方を取ったのだ。


 ホント、バカばっかである。


 ちなみに、この時のクスハはレイの変装である。

 雰囲気的にも何となく似ている二人だ。ウイッグを付け、特殊カラーコンタクトで黒い瞳にしているレイ
を、遠目に見ている連中が解る訳がない。


 結局、男子の殆どが夢の住人となってしまったのだ・・・・・・・・・。


 さて、こんな眼に合わされているケンスケはというと・・・・・・・・・。

 
 教室に姿は無かった・・・・・・・・・・・・・。




 彼は今日も、




 戦場にいた・・・・・・・・・。






                *   *   *   *   *   *   *   *   *





 ズキューーーーーーーーーーーーーーーン



 「うひぃいいいいっ!!」


 奇跡としか言えないタイミングで身をかがめると、彼の額のあった位置を何かがかすめていった。


 ンなもん、狙撃に向くかっ!!! と銃のマニアなら絶叫するであろうが、使っているのが“G”なら仕
方が無いと納得するであろう名銃M−16A2ライフルの弾である。


 当然、額狙いだからジャスティスショット(意味が違うっ)だ。


 辛くも茂みに逃げ切ったが、這い蹲ったケンスケの目の前にモスグリーンの足つき飯盒の様なモノが突き
刺さっていた。


 「!!!」


 考えるより前に這い蹲ったままの体勢で、カエルも脱帽する跳躍をやってみせた。


 瞬間、



 ズガガーーーーーーーン!!!



 中に詰められた700個の鉄球が60度コーンに爆散するクレイモア対人地雷(手作り)であった。



 「ち、ちくしょおおおおおおおおっ!!! マジ殺す気かぁあああああっ?!」


 「当たり前じゃあっ!! オレのクスハを〜〜〜っ!!!」

 「ナニ言ってやがる!! 人の女をっ!!」

 「そうだそうだっ!! ボクの奥さんだぞ!!!」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・男達はホロリとさせられるほどイっていた・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 取り返しのつかない、あっちの世界へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



 まぁ、ケンスケにとって追撃者が妄想癖のある軍団だと言うのが不幸だったと言えよう。

 パラノイア・アーミーとでも言えばよいのだろうか?


 「知るかボケ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」



 突然、

 校庭の一部が人型にめくれ上がってケンスケを羽交い絞めにした。

 「わわっ!! ぐっ・・・・・・」

 ギリギリギリと締め上げられてゆく喉。

 「・・・・・・・・・」

 頭にバンタナを巻いた年齢詐称してるとしか思えないスタローン似の少年が無言でアーミーナイフを抜い
た。

 『う、うおっ?! ラ、ランボー3のバージョン・・・・・・・・・』

 ・・・・・・死が迫っていると言うのに、妙な事を気にするケンスケ。

 アドレナリンがどばぁどばぁと出ている為か、全てがスローリーに見えるからであろうか。


 どちらにしてもお陀仏直前だ。


 死ぬなケンスケ!! 君が死んだらこの罪も無い一般中学生は犯罪者になってしまう!!


 『く、くそっ!!! オレの方はどうでもいいってのか?!』


 ま、それはともかく・・・・・・。


 『コノヤロぉおおおおおおおおおおおおおおおお・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


 意識を失いかかるケンスケの眼には、死んだ母が映っていた。

 『おふくろ・・・・・・・・・』

 走馬灯がまわる頭の中、唯一心を癒される一コマであった。


 記憶の中だけであったママンは、優しくケンスケに微笑むとこう言った。











 『ケンスケや・・・・・・・・・。人間、諦めが肝心よ?』











 「Noooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooっ!!!」



 一瞬で意識を取り戻すケンスケ。

 だが、眼前に迫るナイフはどーしよーも無かった。





 彼の視界を、





 真っ赤なナニかが覆った・・・・・・・・・。





 それは・・・・・・・・・。















 「フォーエバーフレンドリーキィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーック!!!!!!!!」




 ずがぁああああっ!!!!




 筋骨隆々とした年齢詐称少年は、赤い戦闘服の人間の凄まじいキックを喰らって悶絶した。

 「な、なんだよお前は?!」

 「じゃ、邪魔をするなよ!!」

 追撃者も慌てふためく。


 「あ、あんたは・・・・・・・・・?」

 自由にされた喉を押さえ、荒い息で問い掛ける。

 「オレの名は・・・・・・・・・フラレンジャー!!!」


 カッカッカッ


 何故か三段スライド方式でアップになりつつ振り返り、



 ドォオオオオオオオオオオオオン!!!



 背後に赤い爆発を背負って、奇妙なポーズ付きで名乗りを上げた。




 「「「「な、なんだとぉ?!」」」」


 ナゼか追撃者たちもオーバーアクション気味に驚いた。



 ケンスケは置いてけぼり気味である。


 「さぁ、お前は逃げろ!! こいつらは任せるんだ!!」

 何故かビシっと右拳を出して、根拠無い自信に満ち溢れかえってそう言った。

 「え? あ、ああ・・・・・・・・・すまん」

 ワケも解からず逃亡するケンスケ。

 「待てっ!!」

 追おうとする刺客の前に、立ち塞がる赤いヤツ。

 「おのれ・・・・・・邪魔するか・・・・・・」

 アヤシイ空間に飲み込まれでもしたか、追撃者たちはスッカリ悪役のノリだった。


 そんな彼らをビシっと左拳を握り見せ、見得を切るフラレンジャー。


 「ここから先は通さんっ!!! ヤツを、惨殺するのはオレじゃあ!!!!!」




 ・・・・・・・・・しかし、言ってるコトはナニであった・・・・・・・・・。





                 *   *   *   *   *   *   *   *   *




 「・・・・・・てなワケで、校内の治安は落ちる一方なのよ・・・・・・」


 ミサトの説明が終わると、2−Aの皆は一様にでっかい汗を垂らしていた。


 シンジにしても、どう言ったらよいか返答に困っている。


 アスカ、レイはケンスケ等どーでもよかった(酷っ)。

 釣りをする時の“撒き餌”程度にしか思っていないのだから(酷すぎ)。

 かと言って、ほっとくと友達思いのシンジが傷ついてしまう。

 “それだけ”は勘弁してほしい。


 しかし、今の話し合いは“扱い”である。

 今更どないせーと言うのだろうか?


 まぁ、校舎裏や裏庭でバイオレンスなバトルを繰り広げられるのは勘弁してほしいだろう。

 只でさえ都市伝説のようなスナイパーは出るわ、謎のヒーローは出るわの状態なのだ。

 このペースでバトられて、“番長”なんていう前世紀の遺物でも出現したら眼も当てられない。

 第三東京市の恥になってしまう。


 一番よい方法はある。


 クスハの消滅だ。


 が、来年の文化祭に出現することは“ある集団”によって決められているのだ。


 再来という“イベント”で盛り上がられたら本末転倒だ。


 どうこう言っても意見は堂々巡りになっていた・・・・・・。


 だが、その沈黙を破る勇者がいた。



 がたっ


 ビシっ


 「センセー」


 椅子を引いて立ち上がり、挙手する少年。


 「はい、鈴原クン」


 トウジであった。


 「ケンスケを狙うとる連中って、どんどん戦線離脱しよるんやな?」

 「え? う、うん。霧島君の策で強い一体と多数の戦いになってね・・・・・・」


 『なんだか使徒と人間の戦いみたいだ・・・・・・』

 呑気にそんなことを考えてしまうシンジ。


 「せやったら、無意味にちょっかい出すより静観して沈静化を待つってのはどないです?
  ワイらは沈静する直前で介入して、牽制させ合って完全に沈静するのを防ぐんですわ」

 「あ、な〜〜るほど。飛び火してあたしたちに害が来たら堪んないしね。
  その案、ナイスよ!!」

 拍手を受けるトウジ。

 照れつつ椅子に座ろうとする彼に、ヒカリが尊敬するような眼差しを向けていた。

 その少女に、ニッと彼らしい笑みを浮かべるとヒカリは真っ赤になって俯いた。

 そんなヒカリの様子を見てニタリと笑うアスカとレイ。


 結局、トウジの案がそのまま採用され、沈静直前でどうやって冷戦化させるかという案を募る事にした。



 トウジの策の欠点。



 ケンスケの人権が蔑ろな事である。



 流石はケンスケ。

 八面六臂の四面楚歌。

 上下左右敵だらけだ。

 しかし、これも爺婆親バカ連合軍のスケジュール通りなのだ。

 だからあきらめて♪


 「アホかぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」


















 「なんだろう・・・・・・凄く気になる」

 いつもの騒ぎの後、ベッドの中で天井を見つめるシンジ。


 朝見たマヤの悲しげな眼差し・・・・・・・・・。


 それを見た瞬間、心のどこかにヒビが入ったような気がする。


 あんな顔をさせたくなかったのに・・・・・・・・・。


 させたく・・・・・・・・・なかった?


 僕は前から知ってるんだろうか?


 ・・・・・・・・・知ってる・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな・・・・・・・・・・・・・・・気がする・・・・・・・・・。


 いつしかシンジは眠りに着いた。



 シンジは知らない。



 眠りとは、脳や身体を休める事以外にも、記憶や知識の最適化を行う事でもあるのだ。



 彼の記憶は“前”と“こっち”とに完全に分断されている上、

 同じ時間を別の進路で進んでいるのだ。

 それは“記憶”にとって途轍もない矛盾である。




 入ってヒビはどんどん大きくなる。

 ビシビシと亀裂が入って、割れてゆく。


 その割れた壁の向こうに自分を見つめるものがあったのであるが、




 シンジはまだ、気付いていなかった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


作者"片山 十三"様へのメール/小説の感想はこちら。
boh3@mwc.biglobe.ne.jp

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