白い壁とリノリウムの床───


 これだけでは研究室だか病院だか解からないが、廊下に面したドアに掛けられている<第二待合室>とい
う文字からすると病院なのだろう。

 その待合室には数人の女性達が赤ちゃんを抱いており、検診の順番や退院の手続きが終わるのを待ってい
る。



 そして、その中に一際目立つ女性がいた。



 年の頃は二十歳程。長い赤みがかった金髪を左右に分けた、やや童顔ながら物凄い美女である。



 その美女が、まだ生後一,二ヶ月くらいの赤ちゃんを抱いて、聖母のように柔らかく微笑んでいるのだ。



 そして、その横には彼女を支えるように同じ年頃の青年。

 中々の長身で、スリムな身体に無駄肉の無い筋肉が詰まっている。

 顔も上級で、見るものを飽きさせないものがあった。


 だが、その瞳はあくまで優しく隣に座る赤みがかった金髪の妻と赤ちゃんだけを見つめ続けている。

 彼にとって、世界は彼女達だけであるかのように・・・・・・・・・。




 その若夫婦のすぐ近くには、これまた長い髪の美女がいた。

 年の頃は三十代半ば。女盛りの色気は脂が乗っており、中々にキリリとした美女である。


 その紫がかった長い黒髪の美女は、赤いNERVのジャケットを羽織り、腕を組んで座っていた。

 だが、その瞼は重く閉ざされており、意識はここにはない。

 連日の激務で睡眠不足なのである。


 それでも赤みがかった金髪の女性と赤ちゃんの為に付き添うのだ。


 大切な“家族”なのだから・・・・・・。




 「あ、笑った」

 その付き添われている若い母親が嬉しそうな声を出す。

 その声だけで美女の意識が戻ってきた。


 すぐに反応できるように鍛えているからだ。


 「ホント? ・・・・・・あ、ホントだ」

 青年の嬉しそうな声もする。


 ───懐かしい・・・・・・。


 黒髪の美女は昔を懐かしむ。

 昔は些細な事でこの二人は言い争ったものだ。


 だが、それはじゃれあいだったのも解かってる。


 なんと言って二人は笑顔だったのだから・・・・・・・・・。


 それを奪ったのは、あのドイツのボケ科学者だ・・・・・・・・・今思い出しただけでハラワタが煮えくり返る思い
がする・・・・・・。


 「ね? 今にとんでもない美人になるわよ? なんてったってアタシの子供なんだもん」

 「あ、あの・・・・・・僕の子供でもあるんだけど・・・・・・」

 「アンタなんかのひ弱な遺伝子が混じる訳なんじゃないの。アタシの優性遺伝子をバリバリに受けた子供
  に決まってんじゃない」

 「ひ、酷いよアスカぁ」


 そうそう、こんな感じ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?


 「あははは・・・・・・ウソよ♪ ちゃんとアンタに似て優しい子になるわよ」

 「でも、アスカも優しいじゃないか。アスカに似て美人で優しいなんて・・・・・・先が心配だよ」

 「ありがと♪ シンジ」


 え?!


 ガバっと跳ね起きる黒髪の美女──ミサト──。

 「ちょ、ちょっと・・・・・・シンちゃん? アスカ?」





 声が震える。




 身体に鳥肌が立つ。





 こんな事があるというの・・・・・・・・・?





 「? どうしたのよミサト」

 「ミサトさん?」

 きょとんとした二人。



 間違いない。



 あの二人だ。



 状況が理解できずポカンとする二人と、引きつった笑みが浮かぶミサト。





 その保護者の笑える顔を見て、





 二人は、





 フッ・・・・・・と・・・・・・・・・苦笑した。





 事故の後、笑顔を向けてくれても儚げな笑顔だった・・・・・・・・・。

 生きているだけの儚い心だった・・・・・・・・・。




 だけど違う!!!




 二人の目には生きている力がある!!




 なにより強い光がある!!





 この二人は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。







 あの二人なんだっ!!!!!!!!







 「シンちゃん!!! アスカぁ〜〜〜っ!!!!」


 「わぁっ!! ミ、ミサトさん?!」

 「ちょ、ちょっと!! 何なのよ?!!!」


 泣きながら二人に抱きつくミサト。

 ミサトのきつ過ぎる抱擁から愛娘を庇いつつも、訳が解からず混乱する二人。




 ここはNERV管理の産婦人科の待合室。


 やっとこの間産まれた二人の愛娘の体調が安定し、退院するアスカ達を迎えに来たはずだった。


 流石に自分の車では狭すぎる為、ハイヤーを呼んで待っていた僅かの時間、ついウトウトしてただけだっ
た。



 一瞬、夢かと思った。



 だけど・・・・・・・・・。



 夢じゃない!!




 あの、“あたたかい時間”が戻ってきたんだ!!!





 待合室はミサトから噴出した喜びに溢れかえり、


 場所もへったくれもなく彼女はわんわん泣き続けた・・・・・・・・・。



 「おかえり・・・・・・おかえりなさい、シンちゃん、アスカぁ・・・・・・」


 「え、えと・・・・・・? ただいま・・・・・・」

 「た、ただいま・・・・・・・・・何なの?」


 訳が解からないまま、挨拶を返す二人。

 シンジのその声に、初めて自分の部屋に迎えた時の事を思い出し、また泣き始めるミサト。





 アスカの腕の中、何も知らないはずの愛娘が、そんなミサトを見つめて笑っていた・・・・・・・・・。







 その晩からNERVで大宴会が行われるのは決定事項。


 珍しく酔っぱらっていたリツコは、

 「多分、お互いの魂の切れ端が完全に“自立”したのね・・・・・・これはあくまでも勘だけど・・・・・・」

 と、科学者らしからぬ意見を述べた。






 時に、2021年12月6日───


 アスカの二十歳の誕生日、二日後の奇跡であった・・・・・・・・・。









                             はっぴぃDay’S

                        NEXT・STEP はっぴぃDay’S








 遠くで聞こえるざわめき。


 歓声、そして祝いの言葉。


 それを右から左に流す形で、一人の青年が座り込んでいた。


 ここは離れの一室───


 どこからか響いてくるのは荘厳なるパイプオルガンの音色。


 壁も天井も白く、青年が座っている椅子も白い。

 当然の如く、青年の衣装すらも・・・・・・・・・。




 言うまでもなく、ここは教会。


 本日は結婚式なのだ。


 誰の? 等とボケをかましてはいけない。


 見たまんま、この青年の結婚式なのである。




 友人と家族だけのこじんまりとした式にしよう。

 披露宴なんかやらない。

 イキナリすっ飛ばして友人だけ二次会へ行き、家族は宴会へ突入・・・・・・これは決定事項だ。



 だが、それでも青年の顔色は冴えない。


 式はとにかく、かなりの地味婚にした・・・・・・・・・つもりだ。

 人付き合いに今一つ自信の無い青年にとって、友人,家族の心遣いはありがたかった。



 それでも顔色の冴えない理由とは・・・・・・・・・?




 コンコン・・・・・・。




 ドアが優しくノックされる。

 「・・・・・・え? あ、ハイ」

 「失礼するよ」



 カチャ・・・・・・。



 そう言ってドアを開け、一人の老人が入って来た。

 牧師の礼装に身を包んだ老人であるからして、本日の式を取り仕切ってくれるこの教会の牧師なのであろ
う。

 「キールさん・・・・・・」

 青年が、その老人をみてそう呟いた。

 「シンジ君・・・・・・用意は出来ているみたいだね」

 キールはその青年・・・・・・碇シンジを見て納得するように頷いた。





 碇シンジ・・・・・・・・・二十歳・・・・・・・・・高校卒業後、第二大学理工科に進む。

 NERV技術部と掛け持ちで研究を進め、学生の身分ながら前世紀から研究がされていた衛星軌道上から
のマイクロウェーブ発電システム及び、レーザー発電システムを確立化させ、ついこの間衛星を打ち上げて
実用レベルにまで押し上げた最大の功労者。

 半年前から発電運転を開始させ、世界レベルで注目をされている青年である。

 この世にこの発電システムがある限り、まったくもって生活に困らなくなった青年だが、あっさりとその
権利を国に一任した。

 『だって、僕はただの研究者だから』

 と言うセリフは衝撃と共に世界に伝えられ、彼の名声をどうしようもないくらい克ち上げた事は記憶に新
しい。


 「シンジ君・・・・・・そろそろ時間だよ」

 「あ・・・・・・・・・ハイ・・・・・・・・・」

 だが、シンジの声に元気は無い。

 訝しげに見つめるキール。

 「? どうしたのかね? 牧師はいやかね? だったら神父にするが・・・・・・」

 バッ!! と衣装を脱ぎ去ると、下からはなんと神父の礼服。

 プロテスタントとカソリック、両方の用意をしていたようである。

 「わ、わぁっ! 違いますよ!!」

 「む・・・・・? ならば仏前がよいのかね?」

 バッ!! と“カツラ”を取り、何故か衣装の下から如法衣が・・・・・・。

 彼はこの日の為に僧籍も置いていたのである。

 「ち、違いますよ!!」

 「むぅ・・・・・・神前結婚がよいのか・・・・・・」

 いそいそと神主の衣装を取り出すキールを慌てて止めるシンジ。

 「そうじゃないですっ!! 大体、教会で神社の格好をしてどうするんですか!!!」

 「気にすることはない。ここは宗教がごった煮の国、日本だ。
 
  仏教徒だってクリスマスを祝ったりするじゃないか。
 
  高野山大学の生徒だってクリスマスに女子大と合コンなんかやっているのだぞ」


 シンジの声にも慌てた風もなく、元の牧師スタイルに戻るキール。

 溜息仕切りのシンジ。

 「それにな、シンジ君・・・・・・・・・。私が信仰しているのは神仏であって“宗教”などではないのだ。宗派の
  違いあれ、神は神なのだからね・・・・・・・・・」

 落ち着いた声で持論を述べる。

 かけもちであちこちの宗教で席を置いているだけの事はある・・・・・・・・・ってゆーか、そんな事が可能なのだ
ろうか?

 いや、それ以前にやってもよいのか?


 「時間だよ、シンジ君!!」

 ノックも無しに飛び込んできたのは銀髪の青年。

 礼服が似合っていることは似合っているのだが、本人の雰囲気がナニなので、ディスコ等の黒服かホスト
にしか見えない。

 「おお、そんな時間か・・・・・・先に行ってるよ」

 そう言って慌てて退出する牧師。

 とてもアバウトな聖職者だ。

 いいのかキール? そんなんで。


 「さあ、行こうよシンジ君。君の奥さんがお待ちだよ」

 そう言って手を差し出すカヲルに、微笑とも困惑ともとれる、なんとも言えない表情をして立ち上がる新
郎。


 チャペルへ進む道すがら、シンジはやや前を歩く天国の住人に声をかけた。

 「カヲル君・・・・・・」

 今日という日が当人より嬉しいのか、地に足が着いていないカヲルは、未だに天国の住人と化している。

 それでも満面の笑みをシンジに投げかけ、第九・・・・・・つまり“喜びの歌”を口すさんでいた彼はこう言っ
た。


 「シンジ君・・・・・・今日からは正式に僕の“義弟”なんだから、“お義兄さん”と呼んでくれないかい?」


 「え?! えと・・・・・・・・・」

 照れたように、そして困ったように俯くシンジ。

 こんな所は中学生の時から全く変わっていない。

 大学生となり、シンジと同じようにNERVと掛け持ちで研究を続け、シンジの片腕として頭脳を使いま
くっている彼も、シンジのそんな所が微笑ましくて愛しい。

 「あははは・・・・・・まぁ、後日の楽しみに取っておくよ・・・・・・今は天国へのゲートを潜ろうじゃないか」


 そう言って重厚な扉の取っ手に手を掛けた。





 “あの”戦いの世界にて、少年の為に死を選びヘヴンズゲートを潜ったカヲルは、






 彼の新たなる旅立ちの為、天国への扉を開いた。






 開いた扉の向こう・・・・・・・・・。




 祝ってくれる中学,高校の級友、恩師、家族“達”・・・・・・・・・。




 そしてその向こう・・・・・・・・・。




 巨大な十字架の下、走ってきたのだろう、やや息を切らせた牧師の前に“妻”が・・・・・・・・・・・・。




 純白のウエディングドレスに身を包んだ“妻”・・・・・・・・・。










 「やっと来たわねバカシンジ」

 「シンちゃん、遅い〜〜」

 「シンジくん、わたし・・・・・・嬉しい・・・・・・」

 「これからもよろしくね・・・・・・・・・シンくん」






 いや、妻“達”がいた。










 時に、2015年、末・・・・・・───


 第三新東京市にある秘密結社が誕生した。

 その名は“ビッグ・ファミリー”・・・・・・通称『BF団』である。


 彼らの野望・・・・・・・・・それは、碇シンジ補完計画・・・・・・・・・。


 彼を慕う少女達とその親達の集団が一つの家族になって幸せになろう・・・・・・という壮大な計画であった。


 その為にキールは内閣・・・・・・そして与野党を乗っ取り、政治関係者を全て支配、法改正を行ったのだ。



 つまり、一夫多妻認可法案である!!!



 表向きはボトルネック寸前にまで窮まった少子化に歯止めを掛ける為であるものの、満場一致で反対者が
ゼロと言う時点でアヤシサ大爆発の不自然極まりない結果である。

 当然ながら調べようとする輩が出て来た。


 が、彼らはBF団構成員たる葛城“旧姓、加持”リョウジ達によって捕らえられ、霧島研究所で洗脳処置
を施されている。

 そこから出て来た内定者達は一様に、

 『我ラ、びっぐふぁみりーノ為ニ!!』

 とイッちゃってたりする・・・・・・・・・。


 そして今、2021年12月9日・・・・・・・・・。


 BF団の野望が叶えられようとしていた。



 「うう・・・・・・シンジ、問題ないぞ・・・・・・」

 「ゲンドウさん・・・・・・」

 滂沱の涙を流すのは父、ゲンドウ。

 正に感涙である。

 自分も涙を流しつつも夫の涙を拭ってやるユイ。

 妻の鏡だ。

 が、ゲンドウの紋付袴はチャペルでは如何なものか?



 「汝、惣流・アスカ・ラングレーは、碇シンジを夫とし、生涯愛することを誓うか?」

 やはりキール牧師。セオリー通りではなく、自己流に式を進ませてたりする。

 「当然よ!!」

 「アスカちゃん・・・・・・その言い方はないでしょ・・・・・・」

 「うう・・・・・・育て方を間違えたかな・・・・・・」

 やや悲観する親子を背に、口はともかく満面に幸せさを溢れさせて少女から美女へと脱皮を果たしたアス
カは自信満々にそう言った。

 モデル顔負け・・・・・・と言うより、その辺のモデルが裸足で逃げるレベルである。

 シンジへのやっかみの凄さは推して知るべしだ。

 しかし、当人にとっては知った事ではなく、態度は大きいが瞳が涙で潤んでいるのが微笑ましい。


 それはそうだろう。


 “あっち”と“こちら”の自分との共通の想い、『シンジと共に人生を歩む』という願いが果たされよう
としているのだから・・・・・・。


 碇アスカ・・・・・・後に、夫シンジと共にエネルギー伝達システムを確立化させ、世界レベルでエネルギー問
題を解決させる女性である。



 「汝、六分儀レイは、碇シンジを夫とし、生涯愛することを誓うか?」

 「は〜い。誓いまぁ〜〜す」



 「レイ・・・・・・学級会じゃないのよ・・・・・・」

 溜息混じりではあるが、孫の晴れ姿に涙するレイカ。

 そして、相変わらずのんびりとした口調ではあるものの、レイはアスカ同様に喜びの涙で瞳を潤ませてい
る。

 “あの”赤い世界で終わった筈の人生が、別のルートへ回ったことを万感の思いで噛み締めているのだ。

 好き嫌いを直し、肉すら食べられるようになった彼女はプロポーションすらアスカに追いついている。

 髪の色、瞳の色も“前”と同じであるが、純白のドレスに映える色でなんとも美しい。


 碇レイ・・・・・・後に、シンジ,アスカと共同で開発したオゾン発生器を南極大陸とグリーンランドに設置し、
温暖化に歯止めを掛ける女性である。



 「汝、霧島マナは、碇シンジを夫とし、生涯愛することを誓うか?」

 「ふぁいっ・・・・・・誓いましゅ・・・・・・」


 マナは感極まって泣いていた。


 「フフ・・・・・・マナも嬉しそうだね・・・・・・ボクも眩暈がするよ・・・・・・幸せって事だね」

 「ふむ・・・・・・カヲルの顔色も良いな・・・・・・マナも歓喜している事であるし・・・・・・私も幸せを噛み締めてい
  る・・・・・・。
  流石はシンジ君・・・・・・我が家族全員を幸せにしてくれるとは・・・・・・正に“福音を運ぶ者”と言ったとこ
  ろか・・・・・・」

 その霧島教授の相変わらずクドい言葉にハッとして、父の顔を見るカヲル。

 そう、自分に“妹”を“家族”をくれて、人間として生きていく事の幸せを教えてくれたのは他ならぬシ
ンジである。


 “福音を運ぶ者”・・・・・・エヴァンゲリオン・・・・・・・・・。


 その名を久しぶりに聞いたのであるが・・・・・・・・・。

 『そうか・・・・・・この世界には無いと思ってたけど・・・・・・・・・君の事だったんだねシンジ君・・・・・・・・・』

 今や自分の義弟として新たな絆を与えてくれた青年を、また別の好意の想いが溢れ出すカヲル。


 その視線の先で、“この世界”で得た絆の一つが、涙で顔をくしゃくしゃにしていた・・・・・・・・・。


 碇マナ・・・・・・・・・後にそのサバイバル経験を活かし、プラントハンターとなって発見した新種の麦から新た
なる麦の品種を掛け合わせだけで生み出し、世界の食糧危機に歯止めを掛ける女性である。



 「汝、伊吹マヤは、碇シンジを夫とし、生涯愛することを誓うか?」

 「ハイ・・・・・・誓います・・・・・・」



 「幸せそう・・・・・・妹のくせに姉の私より早いんだもの・・・・・・生意気よ」

 「マヤ・・・・・・・・・良かったわ・・・・・・・・・」

 口では嫌味ったらしいが、その顔は涙で化粧が流れそうなリツコ。

 そして母として接してきたナオコも・・・・・・。


 なんとか三十前で結婚できたマヤであるが、生来の童顔のせいか、未だに二十歳前後の外見である。

 姉のようなリツコも、今や三十半ば。


 美人である彼女の相手はより取り見取りのハズであるが、

 「あんたもねぇ・・・・・・私に似て美人のくせに・・・・・・要領が悪いのかしら・・・・・・・・・?」

 「失礼ねぇ・・・・・・母さんに似て選り好みが激しいだけよ!!」

 という事だ。

 尤も、三年後にはある研究者と結婚してベタ甘な妻となって母を呆れさせるのだが・・・・・・それは余談であ
る。


 碇マヤ・・・・・・後に、シンジ達の作り上げたシステムのプログラムを担当し、衛星や気象観測システム担当
の中核となり、自然災害から世界を救う事となる。




 「アスカ・・・・・・綺麗・・・・・・・・・ホントに嬉しそう・・・・・・」

 「せやけど、態度は相変わらずやなぁ・・・・・・」

 そう仰られるのは、鈴原夫婦。


 妻である鈴原ヒカリの横には可愛い男の子が母のスカートの裾を掴んで立っており、綺麗なお嫁さん“達”
に眼を奪われていた。


 この子供こそ二人の一粒種のホクトくん(四つ)である。


 ・・・・・・え? 歳がおかしい?


 そう、人に対してフケツフケツとほざいていた委員長様は、第壱中学の卒業式の後に皆で打ち上げに行っ
た時、その時に流れでつい飲酒をしてしまい、朝目が覚めてみるとトウジと二人でベッドの中というポカを
かましてしまったのである。

 これがまた大当たりで、高校の入学式の後に妊娠が発覚、二人を大いに悩ませた。


 ここで介入してきたのがBF団である。


 二人の家族への説明と交際認可の説得、及び高校生活と出産から入籍までのサポートと結婚の手助け等、
全てにおいてカバーする代わりにBF団に入る事を持ちかけたのだ。

 これからの事に不安を持っていた二人は一も二もなく同意し、シンジに内緒でBF団に入団したのである。


 とは言うものの、これといって変わったことをやらされる訳ではない。


 シンジと“大奥”との仲を取り持ち、シンジの複数婚に対する認識を“正し”、アスカ達との重婚に向かわ
せる手助けをさせられただけである。


 『な〜〜んや、いつもと変わりないやん』

 とはトウジの弁。

 ヒカリにしても、シンジが誰とくっ付いてもアスカが辛そうな顔をするし、アスカが選ばれた時の他の子
が悲しむ顔も見たくない。


 よって、ヒカリの方が積極的に活動したとも言える。


 ・・・・・・それに、とっとと妊娠した自分は他人をフケツと言えないのだ。


 今はトウジがNERVの補給運搬部で働いており、生活も安定して幸せな夫婦生活を送っている。




 「う〜〜ん・・・・・・奥さん四人かぁ・・・・・・やっぱシンちゃんも絶倫よねぇ〜〜」

 シャンパン片手にそうのたまうのは葛城ミサト元第壱中学担任である。

 ついに加持リョウジを婿殿して迎え、葛城リョウジとしてちゃんと妻として働いているのだから世の中解
からない。

 彼女の横にはビデオカメラを構えた夫のリョウジが、この一大イベントを収録中であり、その間には小さ
な女の子が立っていた。


───二人の愛娘、葛城ケイである。


 ミサト曰く、

 『子供が産まれたら、どっちかの姓にする事になってるけど、アンタの名字だったら名前に困るの』

 それが、加持が婿殿となった理由である。


 確かに、加持リョウジよりも葛城リョウジの方がなんかカッコイイし、語呂も良い。

 ミサトは次に男の子が生まれたら“シンジ”と名づけ、家で『シンちゃん、シンちゃん♪』と呼ぶつもり
なので強引にコトに及んだのだ(酷すぎ)。


 ・・・・・・・・・まぁ、やはり加持シンジはちょっと語呂が悪いが・・・・・・・・・。


 それでも気にした風もないリョウジ。

 彼にしてみれば妻の可愛いお願いを聞いただけであるし、自分の名字に拘りなんて無いのだ。


 「皆、美人でシンジ君が羨ましいよ」


 そんな本音をつい漏らし、怒れる鬼嫁に折檻を喰らう事となるが・・・・・・・・・甚だ余談である。




 「ほらほら、アレがシンジ君よ〜。皆覚えてね〜〜」

 「優しそう・・・・・・(ぽっ)」

 「うん」

 「あ〜〜」

 「う?」


 三人の赤茶の髪の女の子に囲まれ、二人の赤ちゃんを乳母車に入れ、本人のお腹も張っており、この子も
今順調に育ってま〜すとアピールしまくっているのは旧姓ハルハラ、現“相田”となったハルコである。


 細っこいくせにポンポン子供を産んで、現在は五人(お腹の子を入れると六人)の娘持ちだ。


 ケンスケにナイトアタックを仕掛けたのは良いが、彼女はウッカリとしたところがあり、なんと“避妊”
そのものを知らなかったのである。

 ケンスケが第壱に在籍している間に長女フユキが、高校一年の時に次女ナツキ、二年の時には三女アキ、
三年の時には四女ハルキが、そして去年は五女のシキが産まれてる。


 お陰でケンスケはどこへ行ってもヤりまくりドスケベ男扱いである。


 『違うっ!! 違うんだ!! オレはいつも襲われて・・・・・・』

 彼だってがんばって抵抗した。

 ひたすら自分の置かれている淫靡で悲惨な環境を訴えた。

 だが、

 『う・・・・・・ケンちゃん・・・・・・・・・そんな酷い・・・・・・・・・』

 と、いつもハルコの嘘泣きが発動し、誰も彼もケンスケを信用してくれなかった。


 これが信用度の“差”である。


 そんな彼も戦場カメラマンの助手としてけっこう名が売れている。

 如何なる状況にも飛び込み、駆け抜け、チャンスをモノにし、生還するのだ。

 後に独立して世界的に有名なカメラマンとして脚光を浴びることとなるのだが・・・・・・・・・今はまだしがない
助手だ。

 『え? 危険な戦地で怖くないですかって? ははは・・・・・・学校へ行くよりかはマシだよ。だって戦場は
  兵士と弾と爆弾と地雷しかないからね。フラレンジャーも超人もいないし・・・・・・楽なもんだ』

 と、後の世でインタビューに答えた彼・・・・・・・・・。

 世間には強気のジョークとして受け入れられたのであるが、

 まさか本気の上に真実である事など・・・・・・思いつく訳も無かった・・・・・・・・・。


 「ところでハルコ。なんでナツキ達にシンジを細かく覚えさせてるんだ?」

 師と崇めているカメラマンから、こういった祝いの席では逆にカメラを使わず、心に刻み込むんだと教え
られた通りにしているケンスケ。

 確かに記憶として鮮烈に残るだろう。


 感慨深く式を見つめていた彼は、ひたすら丁寧にシンジの説明をしているハルコに疑問を持って問い掛け
た。

 「え? だってこの娘達の未来の旦那様よ? 今から洗脳してシンジ君だけしか見ないようにしておかな
  いと〜〜」

 「なっ・・・・・・??!!」


 ・・・・・・・・・いつもの事ながら政府のやることは裏で動く者が変わっても抜けているのだか、例の改正された
法律にはやはり穴があった。


 一夫多妻法案・・・・・・一見すると男尊女卑の法律なのだが、実はかなり女性優遇なのだ。


 結婚時にしても、夫の性格をかなり綿密を調査を受けるし、

 結婚できたとしても、夫が妻に暴力を振るったとすれば、厳しく処罰を受ける。

 これはドメスティク・バイオレンスに対応する法律であり、尚且つ、通常の暴行傷害等の罪よりかなり重い。

 更に、夫は妻を平等に愛さねばならず、二人なら二人、三人なら三人と、夜を同時に過ごさねばならず、そ
の時に夫は妻のお願いを断る権利が無いのだ。

 例え不和が生じ離婚となったとしても、妻に全面的な問題が無かった場合は元妻の生活費は全額負担である。


 この他、諸々の決まりはあるが、結局は女性が優遇される。

 尤も、お互いに愛があるのであれば何の問題にもならないのであるが・・・・・・。


 さて、この法律にも“穴”であるが・・・・・・。


 二人以上の女性との婚姻に関する法律であるが、上限が決まっていないのだ。

 つまり、一度重婚許可が下りれば妻を何人持っても良いという決まりなのである。


 その事をハルコは突いているのだ。


 『い、いかん・・・・・・・・・オレには止められん・・・・・・・・・スマン、シンジ・・・・・・・・・』


 ケンスケは未来に起こるであろう碇家内での紛争を思い、今の内から謝罪するのであった・・・・・・・・・。





 「・・・・・・・・・・・・汝、碇シンジ」




 式は滞りなく進んでゆく。




 妻となる女性達は涙を浮かべ、




 夫となる青年は冷や汗をかきつつ・・・・・・・・・。




 「汝は健やかなる時も、厳しい時も、辛い時も、楽しい時も、」




 だが、シンジは“不幸”と感じている訳ではない。




 「何時如何なる時も、惣流・アスカ・ラングレーと」





 ただ単に今日からの“苦労”を、





 「六分儀レイと」





 明日から始まる“苦労”の連続を、





 「霧島マナと」





 そして始まる新たなドタバタ騒ぎを想い、





 「伊吹マヤを妻とし」





 皆と過ごす時間を想い、





 「支えあい、励ましあい、守り合い」





 これからの進む“時”を噛み締めているのである。





 「愛し合い、幸せにする事を、この日この場の主の御前にて・・・・・・・・・“誓いなさい”」





 会場に漏れる失笑と苦笑。



 夫となる男性に妻達を幸せにしろと命令する式など初めて聞いたのだから。




 だがシンジは、やはり苦笑しつつも、側らに立つアスカを見る。

 “前の世界”で苦肉を分かち合い、ついには好き合った女の子・・・・・・・・・・・・。


 第一夫人のポジションに置いてくれるのなら重婚許可!! と言い切った、やはり強気な彼女。



 そしてレイを見る。

 何物にも絆を見出せず、零号機に乗ることでしか絆を感じられなかった少女。

 “ファースト”をアスカに取られたから、わたしは“セカンド”〜〜・・・・・・と、自分らにしか解からない
であろうジョークを言っていた。



 マナを見、マヤを見る。


 ろくな最後を迎えられなかった二人。

 マナはN2で蒸発し、マヤは意識のノイズより帰還できなかった・・・・・・・・・。

 幸せになりたくても行き着けなかった女性・・・・・・・・・。



 だけど、“世界”はまるで違うものの、皆ここで微笑んでいる。



 全てが手に入らないのならいらない!! と言い切った少女も、分かち合う事の方が多くを得られる事を
覚え、結局は取り合えるライバルという“絆”を得て笑っている。





 少年からかなり遠回りに大人へとなったシンジは、






 皆の顔を眺め、






 終ぞ“あの世界”でアスカ達が見られなかった、






 本当の意味での“天使の笑顔”を分け与えた。






 心から溢れ出した“想い”の笑顔は、






 場内の時を停止させ、






 見つめる幼子達を魅了させ、







 妻達を見惚れさせた。







 そして前を向いて青年シンジは声高らかに宣言する。












                          「ハイ。僕に幸せをくれた皆を幸せにします」















 “想い”は世界の“壁”を越え、







 願いは“世界”の道理を越え、






 誓いは“絆”をしっかりと結ぶ。






 時はまた廻り、糸車の如く時間を紡ぎ、







 今日とは違う幸せな明日を、







 明日と違う、幸福な世界を綴る。







 如何なる回り道をしようとも続いて行く紡がれた幸せ、







 幸せな“時”を永遠に。








 だから明日も、










                               はっぴぃDay’S





















 ───あとがき───


 いつもの“あ(と)がき”ではなく、“あとがき”です。

 
 私の好きな投稿作家様がいらっしゃいまして、その方のお言葉があります。

 が、その文を勝手に使えば問題なのであえて語りませんが、私の胸には残りました。


 だから、私もEVA系投稿作品を書く時にある言葉を胸にして書いてます。



 『コイツらを幸せにするのに手段は選ばない』


 
 です。


 だから『はっぴぃ・・・』は使徒との戦いも無く、シンジ達は重婚OKですし、『For “EVA”・・・』は魂の影
響力を持たせ、某所に送ってる話は超強力なサポートがあります。

 他にも色々ありますけど、結局は『そんなんありか〜〜っ』とゼーレに言わしめるよーなパターンです。


 子供達の周辺が手段も目的もわやくちゃなのだから、選ぶ訳にはいかないでしょ?



 この話はここで終わりますが、碇家新婚物語はてきとーに想像&妄想してください。

 ダラダラと長く書いて話をダラけさせたくなかったから31でストップさせました。


 ヘタに想像しますと18禁21禁は当たり前の世界になりますしね〜〜w


 だから、後は皆さんの脳内補完としてベタベタなLASを想うも良し、LRSを想うも良し・・・・・・です。



 これが私の根底の話の作り方なんでしょうね。



 だから『For “EVA”・・・』の皆も幸せに導きましょう・・・・・・遠いですけど・・・・・・・・・。




 最後になりましたが、今まで『はっぴぃ・・・』に感想を送ってくださった皆様、ありがとうございました。



 これからも“この世界”の皆は幸せに生きてゆくでしょう。



 それぞれの幸せを想像してやったくださったら幸いです。






 それではまた・・・・・・・・・・・・・・・。








 さ〜〜てと、次はどんな強引な手で幸せにしようかな・・・・・・・・・・・・。


作者"片山 十三"様へのメール/小説の感想はこちら。
boh3@mwc.biglobe.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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